「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指して【シリーズB資金調達特集vol.1】
モニクルCEO原田慎司が語る
「自由な発想で、くらしとお金の新しい価値を創造する」ことを目指して、日本の金融サービスのあり方を再定義したい、という大きな目標を掲げる株式会社モニクル。この度、2023年9月6日に、シリーズBラウンドで総額約13億円を調達したことを発表しました。(モニクルコーポレートサイトでのお知らせはこちら)今後、調達した資金を活用して、お客様の多様なニーズに対応できるサービスをさらに拡充し、「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指し、進んでまいります。
シリーズBの資金調達の発表に合わせて、本ラウンドで引受先になっていただいたベンチャーキャピタル(VC)、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、ならびに事業会社の皆様と、モニクルの代表取締役CEO原田慎司との対談記事の連載企画をスタートします。1回目となる今回は、対談に先んじて、原田への単独インタビューをお届けいたします。
サービス向上のための人材採用などを目的としたシリーズB資金調達
最初に、これまでの資金調達の経緯についてお聞きしたいと思います。まず、シードラウンドはいつどのように完了したのですか?
シードラウンドの資金調達は2019年8月末に実施していましたが、今思い返すと、当時はまだまだ会社の規模も小さくて、私とCCOの泉田良輔と元気だけがあるみたいな状態でした(笑)。それは冗談としても、当時事業として軌道に乗っていたのは、株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)が運営している経済金融メディア「LIMO(リーモ)」だけでした。
そんな中、2018年に設立した株式会社OneMile Partners(以下ワンマイルパートナーズ、現:株式会社モニクルフィナンシャル)では、デジタルとリアルを融合したサービス提供を掲げており、ベンチャーキャピタルや事業会社に出資していただくことにしました。これが、シードラウンドでの資金調達です。
具体的には、Coral Capital、マネックスベンチャーズ株式会社、株式会社電通国際情報サービス(ISID)などを株主として迎えました。出資してくださったのは、「この人たちがやるんだったら出資します」と言ってくださるような、我々のことを元から知ってくださっていた投資家の方が中心でした。
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なるほど、その後シリーズAラウンドの資金調達を行われたんですよね。
シードラウンドで出資していただいた資金は、ワンマイルパートナーズ(現:モニクルフィナンシャル)の店舗開店資金やFA(ファイナンシャルアドバイザー)やエンジニアの採用費などに使わせていただいたので、2020年はじめにはなくなりかけていました。そこで、2020年からシリーズAの資金調達を始めました。
ただ、そこでコロナ禍に突入してしまい、シリーズAは思った以上に苦戦しました。そんな中でも、私たちの事業の将来性を信じ続けてくださった投資家が集まってくださり、2020年8月にジャフコ グループ株式会社(以下、ジャフコ)をリードインベスターとし、新たにみずほキャピタル株式会社(以下、みずほキャピタル)を株主に迎えるとともに、シードラウンドで出資いただいていたCoral Capitalにも追加出資いただき、約5億円の資金を調達することができました。
そこからの今回のシリーズBラウンドの資金調達を行われたということですが、目的はどこにあったのでしょうか?
目的として一番大きいのは人材の採用です。FAやエンジニアをはじめとするクリエイターなど、多彩な人材確保をしたいと考えています。いいサービスを維持し、新たなサービスを創出するためには、優れた人材の確保が欠かせません。
資金調達が進むのを横目で見ながら、東京の本社をより広いオフィスに移転し、大阪に新たな拠点を作り、さらに新潟オフィスも開設しました。現在、全国に4つの拠点がありますが、今後はさらにグループの拠点を増やし、採用の強化を行っていきたいと考えています。
なるほど。
あとは、既存サービスを拡充するとともに、新規サービスを立ち上げるという目的もあります。「生活者のくらしとお金の課題を解決する」ため、領域の拡大をしていきたいと考えています。
そして、そうした成長を支えるため、コーポレート機能の拡充を行うとともに、弊社のサービスや取り組みについて、情報発信により力を入れていきたいと考えています。例えば、今この記事が掲載されているオウンドメディア「モニクルプラス」など、社外向けの発信やブランディングにも力を入れていきたいと考えています。
冷え込む市場環境の中、評価された「プロダクトマーケットフィット」
前回のシリーズAはかなり苦戦されたということでしたが、今回はいかがでしたか?
今回は、2023年1月に資金調達に本格着手したのですが、実は始めてすぐにシリコンバレーバンクが経営破綻してしまったんです。すると、どんどん新興市場の株価が下がっていき、投資家さんたちの顔色が次第に悪くなっていくのがわかりました。そんな中、新しく投資する会社に対する視線は、当然厳しくなります。そうしたムードが支配的な時期でした。
結構苦戦されたのでしょうか?
私たちとしては、会社の状態もいいですし、事業内容も将来性も再現性も自信を持ってお伝えできる内容ですが、それでもやっぱり市場環境の影響で投資家たちのマインドが冷え込んでいるなとは感じましたね。楽な資金調達はないなというのが、正直な実感です。
ただ、資金を調達したいときに、資本市場の状態がいつもいいとも限らないので、どんな時でも投資家の方にも評価してもらえる状態であることの重要性をあらためて感じました。最終的には、ありがたいことに目標額以上の資金提供のお申し出をいただくことができました。
具体的にはどのような点が評価されたのでしょうか?
まずは、資産運用がトレンド化する中で、弊社が社会のニーズに合ったサービスを提供できているという評価です。来年2024年には「新しいNISA」の制度も始まるため、社会の関心が集まることが予想できます。
新NISA制度などをきっかけにして、弊社と接点をもってもらえて、さまざまなライフサイクルにあわせた提案ができると、ビジネスとしての拡張性もあると判断していただけたと思っています。社会の状況にフィットし、ユーザー数が加速的に伸び、ユニットエコノミクスもしっかりと成立している。「プロダクトマーケットフィット」ができているということだと思います。
そのほかに評価された点はどこでしょうか。
業績がしっかりとついてきていることですね。特に、再現性がある点です。投資家さんたちは、「その実績や結果がまぐれじゃないのか?」ということを、ひたすらチェックするんです。
例えば事業計画に対してずっとプラスの推移が続いていることには、注目していただけたと思っています。2022年、2023年ともに、事業計画を上回る進捗を見せており、投資家の皆様には安心していただけました。
そして何よりも、サービスの提供をしっかりと内製化して、一気通貫でしているところが、弊社にしかないと感じていただけたと思っています。投資家さんにとって参入障壁の高さは必ず抑えるポイントになってきます。
たとえば、私たちは月間UU(ユニークユーザー)で1200万人規模の経済メディア「LIMO」も運営しているので、コンテンツもありますし、「マネイロ」のシステムを自社のエンジニアが内製できる技術力もある。FAの研修・教育・マネジメントも自社でやり切れる。金融サービスに係る集客から成約までのすべてを一気通貫で垂直統合で作り切れるところは、他社が参入する壁が高いと評価いただいたように思います。
金融の専門家とクリエイターがしっかり手を取り合って一つのサービスを作れているということが他社にはない弊社だけの強みですね。ありそうでなかったサービスをゼロから作って、人を集めてマネタイズできているところが一番大きいかなと思っています。
信頼関係が構築できた投資家が集まったシリーズB
最終的に、シリーズBの資金調達はどうなったのでしょうか?
前回に引き続きジャフコをリードインベスターとして、株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン、中国電力株式会社、グローブアドバイザーズベンチャーズLLP、みずほキャピタル等を引受先とした第三者割当増資が完了しました。また、株式会社静岡銀行、株式会社りそな銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社商工組合中央金庫からの借入によって、総額約13億円の資金調達を実施することができました。
なるほど、投資家の方々、そして金額ともに理想的な形で完了できたということですね。
そうですね。先ほどお伝えしたような点で評価していただき、ありがたいことに目標金額を上回る形で資金調達を完了することができました。また何よりもありがたいのは、自分たちのサービスに共感してくださった方々が株主になってくださったことです。実は、私自身も泉田も、「飲みに行けるような間柄の人に投資家になってもらいたい」という思いがあるんです(笑)。
それぐらい信頼してる方に株主として入ってもらいたいということですよね。
そうです。投資期間は長いので、投資家の皆様との間にも人間関係をしっかり構築したいという思いがありました。株主に対しては、会社にとって重要な情報も開示しますから、気持ちよくお付き合いができる関係性を築きたいと常々思っています。そういう意味では、本当に素晴らしい投資家の皆様に入っていただけて、非常に嬉しく思っております。
「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指して
シリーズBラウンドを経て、これからどういったことに取り組んでいきたいと思っていますか?
まずは、既存サービスの拡充に注力します。もちろん、取り扱う金融商品の幅を広げることは検討していますが、お客様とサービスの距離感の多様性も作っていきたいと思っています。
技術の進歩や社会状況の変化によって、対面だけなく、オンラインでのやり取りが可能な現代において、金融領域におけるお客様のニーズも多様化が進んでいると感じます。お客様が求めているサービスが、単純に対面かオンラインかの2択だけではなくなってきていると思うんです。
今、私たちが提供している「マネイロ」のサービスは、相談に来ていただいた方にマンツーマンで手厚く対応しています。ただ一方で、そこまで人との接点を求めていない方もいらっしゃると認識しています。ちょっとだけ話を聞きたい方や、ピンポイントで質問に応えてほしい方など、さまざまな方がおられると…。
お客様のニーズも多様化しているから、提供するサービスも多様化する必要があるということですね。サービスとお客様との距離感を多様化したいということですか?
私自身、長く金融業界にいますが、金融商品ってとても複雑で抽象的なものだという固定観念があると感じています。そして、複雑で抽象的なものほど、人が介在する余地があると思うんです。
今の世の中は、「対面証券でアドバイスをうけるか」か「ネット証券で自分でやるか」かの2択しかないので、その中間地帯にこぼれおちてしまっているニーズが多くあると考えています。どれぐらい人が介在するのか、どこまでIT化できるのか、細かく細分化されているマーケットだと思うので、金融商品の幅を広げていくとともに、お客様とのコミュニケーションのあり方について、求められる形を追求していく作業が必要だと考えています。
なるほど。また、現在ははたらく世代が対象のサービス提供が中心ですが、対象を広げていくなどの展望もありますか?
そうですね、現在のお客様は30~40代が中心ですが、今後はお客様の親御さんやお子さんなど、カバー領域を広げていきたいと思っています。「モニクル」の社名は、「money」と「lifecycle」に由来しています。すべてのライフサイクルで弊社がお客様に寄り添いたい、力になりたいという思いを込めているので、取り組んでいきたいですね。
モニクルとして、どんな社会課題を解決していきたいと考えていますか?
私たちは、「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会の実現に貢献したいと考えています。今の時代、お金を増やすための商品もたくさんあるし、お金に関する情報もたくさんあるし、それを買う場所もたくさんあるんですよね。ただ、意思決定をするためのサービスがほとんどないんです。
例えば「A」と「B」の2つしか知らなかったら、その2つからしか決められませんよね。でも「C」を知った瞬間に、ものの見方や考え方がガラッと変わることがあります。私たちは、「C」をお伝えする存在でありたいんです。
意思決定するうえでの軸をどうするか、それぞれの方が何を基準に決定するかを自分で判断できるように、サポートしたいと思っています。資産運用を米国株か世界株かどちらで行うか悩んでいる方が、そもそもそれ以前に本当はもっと守りを固めなくてはいけないというケースも散見されます。全体像を見せてあげられるような存在でありたいと思っています。
あくまでも、その方が意思決定をするためのサポート役のようなイメージですね。
そうですね。モニクルグループには、優秀なクリエイターと他者の気持ちを理解できる社員が多く在籍しています。こうした特性を活かして、お客様の多様なニーズに対応できるサービスをさらに拡充し、「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指して、進んでいきたいと考えています。