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本邦初の金融サービステック企業「モニクル」ができるまで【2013-2018年】
原田慎司CEOに聞いてみた

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モニクルは「くらしとお金の社会課題を解決する」をミッションとし、「金融サービステック企業」を標榜して経営をしています。

「金融サービス」や「テック企業」という言葉は馴染みがありますが、モニクルが掲げる「金融サービステック企業」というのは多くの人には耳慣れないかと思います。

今回は、どのような経緯でモニクルが出来上がったのか、どのような会社を目指しているのかについて株式会社モニクルの創業者でもあり、代表取締役CEOである原田慎司さんに話を伺いました。

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株式会社モニクル
代表取締役CEO

原田 慎司 Shinji Harada

山口県出身。一橋大学卒業後、大和総研、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ドイツ証券およびシティグループ証券に証券アナリストおよびM&Aバンカーとして勤務。シティグループ証券では総合電機業界の調査責任者を務める。2013年に株式会社ナビゲータープラットフォームを共同創業。その後、2018年に株式会社OneMile Partners(現:株式会社モニクルフィナンシャル)、2021年に株式会社モニクルを設立。現在はモニクルの代表取締役CEOを中心として金融サービステック事業を展開中。

モニクルの原点は10年前のナビゲータープラットフォームにある

早速なのですが、モニクルの設立の経緯について教えてください。

モニクルの会社設立日は、2021年10月と最近設立された会社に見えますが、その原点は、今からざっと10年前までさかのぼります。

2013年3月15日に、モニクルの共同創業者でもある泉田良輔と株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、ナビプラ)を立ち上げました。

ナビプラの立ち上げには、私と泉田以外にも、私の防府高校(山口県)時代の同級生である徳久悟と泉田の愛光中学・高校(愛媛県)の同級生である吉積礼敏の計4人が参画しました。徳久がデザイン担当役員、吉積がテクノロジー担当役員という役回りでした。

徳久と吉積は現在ではそれぞれ本業が忙しくなったので、ナビプラの経営を離れ、徳久はアカデミックでのキャリアとして九州大学共創学部で准教授、吉積はクラウドエース株式会社を抱える吉積ホールディングス株式会社の代表取締役を務めています。

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共同創業者の泉田さんとはもともとどこで知り合ったのでしょうか。

私がシティグループ証券で、日立製作所や東芝といった産業エレクトロニクス企業を担当する証券アナリストだった時に知り合いました。泉田は当時、フィデリティ投信で産業エレクトロニクスやソニーやパナソニックといった民生エレクトロニクス企業などを担当する証券アナリストでした。

業界では私のような証券会社の証券アナリストを「セルサイド・アナリスト」、泉田のような運用会社に所属している証券アナリストを「バイサイド・アナリスト」と呼ぶのですが、泉田は私から見ればお客さんの一人でした。

今はどうか知りませんが、当時は産業エレクトロニクス業界は証券会社や運用会社でもベテランアナリストが担当するのが常で、30代前半と若い私たちはその中で意見交換を重ね、切磋琢磨する関係でした。

その後、泉田がフィデリティ投信を退職し、慶應義塾大の大学院に通っていた時に話をし、一緒に起業しようということになりました。

ちなみに、先ほど話が出た私の高校の同級生だった徳久は泉田が通っていた同じ大学院にあるキャンパスで教えていたので、ナビプラを起業する際のキックオフの会議は慶應義塾大学の日吉キャンパスにある会議室で行ったのを今でも覚えています。

日本経済新聞やブルームバーグでも話題になったLongine

ナビプラはどのような事業をしていたのでしょうか。

ナビプラは現在、はたらく世代向け中心に、くらしとお金をテーマに「LIMO(リーモ)」や「MeChoice(ミーチョイス)」といったネットメディアを運営していますが、会社設立当初は個人投資家向けサブスク型メディア「Longine(ロンジン)」を運営していました。

Longineは個人投資家向けにインターネットメディアを通じて証券アナリストによる日本株式の推奨銘柄を案内するサービスでした。泉田が編集長となり、大手外資系証券会社や運用会社出身の経験豊富な証券アナリストが中心となって情報提供を始めました。

今でこそファイナンスとテクノロジーを掛け合わせた「フィンテック」という言葉もよく耳にしますが、当時では金融機関出身者がテクノロジー領域で起業をするということが珍しいこともあり、会社を立ち上げた当時は日本経済新聞やブルームバーグで取り上げられたりしました。

【日本経済新聞】
アナリスト経験者ら、個人投資家向けリポート 月1050円で配信: 日本経済新聞
【Bloomberg】
体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南

金融機関出身者がメディアであるLongineを始めた理由は何でしょうか。

Longineを始めた最大の理由は、個人投資家と機関投資家と呼ばれるプロ投資家の「投資情報の格差」が大きく、メディアの力でその格差を埋めることで個人投資家により良い資産運用環境を提供できると考えたからです。

今でこそiDeCoやNISA/つみたてNISAといった非課税枠の制度もあり、投資に興味を持たれる方も多くはなっていますが、当時は今ほどの熱量はありませんでした。

「貯蓄から投資へ」というスローガンを、現実のものにしたいと考えていました。

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日本における投資情報の格差の原体験

投資情報の格差について印象的な出来事はあったのでしょうか。

泉田がフィデリティ投信を退職した後に自由に株式売買ができるということで、元々証券口座があった大手証券会社の窓口に行った時のエピソードがあります。

証券会社の担当者に、投資情報資料の提供を依頼したところ、B4サイズほどの大きさで、情報量も少なく、鮮度もフレッシュではない資料が出てきたそうです。

泉田は、機関投資家時代に、その証券会社が発行するアナリストレポート(証券アナリストによる調査分析レポート)を読んでいたため、それを見せてほしいと頼んだところ、「個人投資家にはお見せできません」と断られたそうです。

泉田は「同じ投資家なのに、個人投資家への情報提供の環境がこれでは、まともに調査して投資というのは難しいな。投資以前の問題だな」と、何度も言っていたのを覚えています。

Longineはどんなサービスだったのですか。

Longineは個人投資家向けに分かり易く企業分析を行ったり、決算内容の解説、目標株価などを丁寧に説明し推奨銘柄を提供するサービスでした。

より多くの人に読んでもらいたいという考えから、月間購読料も月1050円(当時の消費税率込み)と、ランチ1回分程度の価格をイメージして価格設定をしました。

Longineの反響はいかがでしたでしょうか。

創業後の3月後の2013年6月にサービスをスタートしましたが、ネット広告などは使わずに、主には口コミなどで集客していたため、購読者数はじわりじわりと会員数が伸びていくという状況でした。

Longineはクレジットカード決済しかできなかったので、高齢者の方から時折会社に電話がかかってきて、「銀行引き落としか振り込みで対応できないか」などの質問はありました。当時は決済手段で購読のハードルがまだあったかもしれません。

興味深かったのは、購読者は個人投資家だけではなく、大手投資信託会社に勤務する証券アナリストやファンドマネージャー、ヘッジファンドの運用担当者にもご利用いただけたことです。

個人向けのサブスクだけで収益化できるものですか。

Longineは、個人投資家の購読者の方から月額課金で購読料としていただいていたほか、一部コンテンツを大手ネット証券に提供していました。今でいうサブスク型やB2B取引を組み合わせて売り上げを立てていました。

順調に会員数や取引先を増やしていきまして、ナビプラ設立初年度は赤字でしたが、次年度以降は決して大きくはない額ですが、黒字となりました。

今振り返ってみて、立ち上げは狙い通りという感じだったのでしょうか。

いや、全然です(笑)。

Longineの会員数もじわりじわり伸びてはいましたが、そもそも日本株の推奨銘柄について「お金を出してまでも推奨銘柄を知りたいという層が大きくはない」と認識するまでにそう長く時間はかからなかったです。

ただ、その一方で収穫もありました。


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個人投資家の悩みを目の当たりにした「泉田塾」

どういった収穫でしょうか。

Longineには、立ち上げ当初から個人投資家として熱心にコンテンツを見てくださる購読者がいました。そうした方々から、資産運用に関する悩みを聞くことができたのです。

2018年に泉田が「泉田塾」という看板を掲げて、Longineの購読者向けに勉強会を始めました。参加者はLongineのサービス初期からの購読者ということで泉田も「Longineのコンテンツにいては十分に理解してくれている方々」という前提で授業をしたらしいのですが、ふたを開けてみると意外な結果になりました。

まず、泉田塾について教えてください。

泉田塾は、Longineのコンテンツでいつもお伝えしている企業分析やバリュエーション(株価評価)を直接レクチャーするという内容でした。

講義と課題を出して、自分でバリュエーションができるようになることが目標でしたので、最終回には、受講者の方が自分でピックアップした銘柄の調査結果を参加者の前で発表することになっていました。

プレゼンテーションですか。本格的ですね。

はい、プレゼン当日は泉田の元同僚で大手運用会社のファンドマネージャー経験がある方をゲストとして招いてプレゼンを見てもらいました。

皆さん、泉田塾で学んだ内容を存分に発揮して素晴らしいプレゼンテーションだったと聞いています。塾としては成功だったと思います。

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ところが、意外なことになるんですね。

そうなんです。

素晴らしいプレゼンが終わり、泉田が卒業証明書を受講生の方に手渡して、お互いに感想を述べて、そろそろお開きにしようと思ったところで、一人の受講生から「私の売買履歴をちょっと見てもらえませんか」と言われたそうです。

泉田さんは何とおっしゃったのですか。

泉田は、その受講生の方が同じ銘柄を繰り返し売買しているのを見て、「授業でお教えしたバリュエーションの方法を自分のものにできたら、こんなに頻繁にトレードする必要はないですよ」と言ったようなんです。

泉田は、その受講生の方のプレゼン内容から、バリュエーションは自分のものにされていると感じていたので、「もう自分で答えだせるようになりましたね」と背中を押す気持ちだったのだと思います。

ところが、その受講生の方の話を聞いてみると「授業の内容は理解できたが、やはり自信がないので、この後も泉田先生にアドバイスしてほしい」とおっしゃったようです。

私たちはこの反応を聞いて当惑しました。受講生の方は経営者としての経験も長く、財務諸表なども十分に理解されていたと思います。さらに、バリュエーションも身に付けられた。

このレベルの方でも投資に自信が持てないのであれば、お金の知識のない一般の方が投資に向き合うというのは相当レベルが高いのではないか、自分たちは頑張る場所が違っていたのではないかと、強烈に感じました。

情報だけでは進まない日本人が投資に向き合う環境づくり

なかなか根深いテーマですね。

私たちはメディアを通じて投資で使える情報提供をしさえすれば、多くの人が投資へ向かうとシンプルに考えていました。

ところが、それ以前に情報を受け取る側がその準備ができていないことを痛感しました。これは日本が金融教育に関してほぼ何もしてこなかったという事実が大きいと思います。ただ、今それを持ち出しても何も始まりません。

例えば、泉田塾のような機会を通じてある程度学べる環境を作ったとしても、お金の専門家が顧客に寄り添って投資に関する具体的なアドバイスをするニーズがあることを知りました。

引き続き、個人投資家のすそ野を広げるために情報提供は必要だけれども、それでは時間がかかりすぎてしまう。

今、目の前に資産形成の始め方や資産運用をどうしたらよいか分からず困っている人がいることが分かり、自分たちに何かできることはないのかと真剣に考えました。それが2018年。ナビプラを作って5年が過ぎていました。

そして、多くの方のお金の課題を人が介在して解決する会社を作る決心をしました。それがのちの株式会社OneMile Partners(現:モニクルフィナンシャル)の原点となります。

では、次回は株式会社OneMile Partners(現:モニクルフィナンシャル)の設立経緯などについて教えてください。

はい、わかりました。(次回の記事はこちら

【参考】モニクル・グループのヒストリー

2013年3月:株式会社ナビゲータープラットフォーム設立
2013年6月:個人投資家向け金融メディア「Longine(ロンジン)」のサービスを開始
2015年4月:株初心者を応援するウェッブメディア「株1(カブワン)」の運営を開始
2015年10月:資産運用初中級者のための金融メディア「投信1(トウシンワン)」の運営を開始(現くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」)
2016年11月:「投信1」の月間PVが100万PVを達成
2017年6月:「投信1」の月間UUが100万人を達成
2018年5月:「泉田塾」開講
2018年7月:「投信1」をくらしとお金の経済メディア「LIMO」へメディア名称を変更
2018年11月:株式会社OneMile Partners(現:モニクルフィナンシャル)設立
2019年11月:OneMile Partners丸の内本店/スタジオ(現マネイロ丸の内本店/スタジオ)をオープン
2020年3月:「Longine」のサービスを終了
2020年4月:新型コロナウイルス感染症拡大により東京都が緊急事態宣言。OneMile Partners丸の内本店/スタジオを一旦クローズ。
2020年5月:OneMile Partnersのセミナー・相談をオンライン化
2020年12月:Webサービス「マネイロ」のローンチ
2021年1月:Webサービス「マネイロ」リニューアル
2021年4月:マネイロ大阪梅田店をオープン
2021年10月:株式会社モニクル設立
2022年11月:くらしとお金の課題解決サービス「MeChoice(ミーチョイス)」をローンチ

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