累計サービス体験者10万人超 はたらく世代のお金の診断・相談サービス「マネイロ」のプロダクト開発
モニクルCEO原田慎司に聞く
株式会社モニクルの子会社である株式会社OneMile Partners(ワンマイルパートナーズ)が展開するお金の診断・相談サービス「マネイロ」。
ワンマイルパートナーズは2019年末から金融サービスをスタートしました。2020年末にサービスのブランディングを行い、サービス名を「マネイロ」に決定。
2021年6月には、累計サービス体験者(オンラインセミナー、オンライン相談、3分投資診断を利用してくださったお客様の累計数)は1万人を超え、2023年10月には10万人を突破しました。その背景には、モニクルが担っているプロダクト開発の存在があります。
今回は、モニクルの原田慎司代表取締役CEOに、マネイロのプロダクト開発についてお伺いします。
※2024年2月6日付で、株式会社OneMile Partnersは株式会社モニクルフィナンシャルに変更いたしました。また、2024年9月4日付で、株式会社ナビゲータープラットフォームは株式会社モニクルリサーチに社名変更いたしました。
マネイロのプロダクト開発は”コロナ禍でのオンライン化”からスタート
まず、マネイロのプロダクト開発について、そのスタートについて教えていただけますか?
私たちは2018年11月にワンマイルパートナーズを設立しましたが、当初からエンジニアを採用して、テクノロジーがけん引するようなビジネスをしようと決めていました。それには理由があります。
最初に起業した株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)は、LIMOなどのWebメディアを運営していますが、社内にエンジニアがいなかったんです。社内に開発リソースを抱えない経営は、身軽ではあります。他方、メディアの改修などに時間がかかってしまい、事業を進める上でスピード感が出せないもどかしさが常にありました。
だからこそ、ワンマイルパートナーズで提供する金融サービスにおいて、妥協はしたくなかったんです。
なるほど。ただ、当初は店舗を展開して、リアルのロケーションで直接サービスを提供しようとしていたんですよね。
そうですね。ワンマイルパートナーズを設立した当初は実店舗を展開することでお客様の資産形成や資産運用のご相談に応じていました。また、泉田(CCOの泉田良輔)が定期的に「マネーセミナー」を開き、そこから集客も行っていました。自ら目の前のお客様の課題を確認するのが、最も確実に求められるサービスを創る方法だと考えたからです。
しかし、ご存知のように2020年に入ると新型コロナウイルス感染症の影響により、対面でのご相談やセミナーの実施が難しくなってしまったんです。2020年4月になると、東京都の緊急事態宣言などの影響で、店舗も休業にせざるを得ませんでした。
そうした集客やサービスの先が見通せない中、役員で何度も議論しました。話し合いの末、これまでリアルで行っていたセミナーと、店舗で行っていたお客様の面談をオンラインでできるようにしようと決断しました。
そんな大きな転換点に、先ほどの「社内に開発リソースを抱える」という方針が功を奏したんですね。
おっしゃる通りです。特に、CTOである塚田との出会いが大きかったです。塚田は設立して少し経ってからワンマイルパートナーズに入社し、彼が信頼するエンジニア2名もその後すぐに入社したので、2020年4月にはハイレベルなエンジニア3人体制になりました。彼らはアジャイル手法やスクラム開発の知見も豊富だったので、当初からモニクルではスクラム開発に取り組んできました。
さらに、当時COOで現在CBDOの瓜田雅和がプロダクトマネージャーの動きをしてくれ、プロジェクトが動き出しました。当時、開発を進めたのはオンライン予約システムと、相談・セミナーのオンライン化です。瓜田と塚田含む3名のエンジニアたちで、それまでリアルに行っていた対面の相談とセミナーのオンライン化をわずか1〜2ヵ月間で実行してくれました。2020年6月からオンデマンド型での店舗営業を開始することができたのです。
これが、マネイロのプロダクト開発のスタートになります。
関連記事Related Articles
それからのマネイロはどのような開発を進め、どのような改良を加えてきたのでしょうか?
2022年1月下旬には、「3分投資診断」をローンチしました。「3分投資診断」は、お客様の年齢や住宅購入希望、退職予定年齢などを入力していくことで、文字通り「3分」という短時間で、将来に準備しておきたい金額とそれに最適な金融商品や運用方法を教えてくれる診断サービスです。
このサービスは、ファイナンシャルアドバイザー(以下、FA)がお客様との面談する際に使用する、ライフシミュレーションツールを一部簡便化して開発したものです。現在も、こちらの診断は多くのお客様にご活用いただいています。企画・設計した本人(瓜田と共同設計)が言うのもおかしな話ですが、非常に複雑なシステムで、繊細なチューニングが必要だったため、社内に優れた開発チームがなければ世に出せなかったと感じています。
関連記事Related Articles
マネイロの強みは真空地帯へのアプローチと集客DX
社内に開発チームがあることが、マネイロの強みの一つなんですね。その他、プロダクトとしてのマネイロの魅力はどんなところにありますか?
まずは、このサービスが”はたらく世代”向けだというところです。金融サービスの多くは、富裕層やハイリテラシー層向けに展開されているため、はたらく世代はボリュームゾーンでありながらも、真空地帯になってしまっているのです。一方、はたらく世代は、お金の課題の密集地帯です。具体的には、将来資金の準備や万一の場合への備え、住宅の購入資金の準備や節約など、課題が山積しています。
その課題を解決するために必要な商品、例えば株式や投資信託、保険や住宅などの金融商品はすでにそろっているのですが、圧倒的に足りていないのが「意思決定をサポートする」サービスです。どの商品を選べばいいのか、どんな資産を組み合わせればいいのか、それはなんのための資産運用なのかなど、お金に関する課題解決のためには、度重なる意思決定が必要になってきます。
その意思決定を支えるために、我々はお客様に「目的」を聞くところからスタートし、寄り添いながら本当に必要な商品を選ぶためのサポートを行っています。
ただ、真空地帯であるがゆえに、マネタイズが大変そうですよね。
よくそういったご質問はいただくのですが、実はサービスをスタートさせた2019年11月から、ずっと右肩上がりでサービス体験者数が伸び続けているんです。なぜ、それができてるかというと、集客のDXがうまくいっているからだと考えています。
たとえば、先ほどお話ししたように、オンラインマネーセミナーやオンライン相談予約、診断サービスは、全てマネイロを体験していただく入り口になっています。
さらに、私たちは「マネイロメディア」というウェブメディアも運営しています。社内のFAが専門家として記事の執筆や監修を行っており、質の高い記事を配信しています。この記事だけでは疑問を解決できなかった方がマネイロのオンラインマネーセミナーやオンライン相談を利用してくださる事例も多く、マネイロへの導線としても大きな役割を果たしてくれています。こちらのメディアも、閲覧者数が伸び続けています。こうしたメディアの運営においては、モニクルの子会社である株式会社ナビゲータープラットフォームが運営している「LIMO」での知見も大いに発揮されていると言えるでしょう。
これらの複数の施策がうまく絡み合って機能しているため、集客のDXが順調にできているというわけです。今年10月には、オンラインマネーセミナー、オンライン相談、3分投資診断を利用してくださったお客様の累計数が10万人を初めて超えました。
多くのお客様が我々のサービスを知ってくださり、オンラインでサービス提供しているので、広告宣伝費、家賃などもあまりかからないリーンなモデルだと言えると思います。こうした集客DXやサービス提供の裏側には、社内で内製化できているシステムの存在が欠かせないのです。マネイロは、顧客体験自体を新しく作っていると、胸を張って言えますね。
モニクルが開発するマネイロに関するプロダクト
モニクルで開発しているマネイロに関連するプロダクトは、どのようなものがあるのでしょうか?
まずは先ほどからお話ししているマネイロのWebサイトです。こちらは、先ほどお話しした3分投資診断ツールやオンライン相談に参加するためのツール、そしてマイページなどを備えている個人のお客様向けサイトです。
そして、ワンマイルパートナーズのFAが使うツールがあります。こちらは「マネイロPRO」と言って、3分投資診断の元となったプロ仕様の診断ツールです。
さらに「マネイロADMIN」はFAが利用する、「ADMIN(アドミン)」と呼ばれるSFA(Sales Force Automation)とCRM(Customer Relationship Management)の機能をあわせもったシステムです。
そのほか、モニクルの管理部が主に使用する、ワンマイルパートナーズの業務に関係する収益計算システム「ZAIMU(ザイム)」や、モニクルで委託を受けている社外向けの金融DXのプロダクトもあります。社内で、同時並行でいくつものスクラムチームが動いている状態ですね。
開発の手法としては、どのようなやり方を取り入れているのでしょうか?
モニクルのプロダクト開発は、アジャイル手法のひとつであるスクラム開発を取り入れています。アジャイルとは、まとめてではなく、少しずつ短い間隔で開発を行い、利用者や関係者のフィードバックを元に調整を行う開発手法のことをいいます。その中でもスクラム開発は、チームで一体となり、開発工程を繰り返して進めるアプローチです。「スプリント」と呼ばれる1週間〜1ヵ月程度の短い期間で、一連の開発工程を繰り返します。その都度調整を行い、最終的なゴールに向かいます。
そのスクラムチームが、社内に複数あるんですね。
そうですね。それぞれにスクラムマスター、プロダクトオーナー、それにドメインエキスパート、エンジニア、デザイナーも全て社内にいます。それに対してステークホルダーとして私がいろいろと依頼をしたり、壁打ちをしたりしています。
マネイロでいうと、プロダクトオーナー1名、スクラムマスターが1名、ドメインエキスパートが1名、そしてエンジニア数名とデザイナーで構成されています。
今後取り組むべきプロダクト開発とは
マネイロでは、これからさらなるサービスの拡大を目指していくと思いますが、課題はなんでしょうか。
とにかく、採用に尽きると思っています。サービスをより多くの人に届けるためには、それだけのFAの数が必要になってきます。今年の11月でサービスを始めてから5年になりましたが、ますますお金に関する課題を抱えている方は増えているように感じます。私たちのサービスは、そうした課題解決につながる取り組みだと考えており、よりサービスの拡充を進めたいと考えています。そのためには、マネイロの運営体制についても、その形を見直すフェーズにきていると思っています。
私自身、マネイロの構想を作った人間として、これまでマネイロを間近で見続けてきました。サービスを始めた頃は、私と泉田と瓜田しかいなくて、泉田はコンテンツをリードして、瓜田は私が言ったことを形にしてくれて…。そこに塚田が入ってきて、ようやく本当にプロダクトができていく過程を経験してきました。
それから組織が大きくなるにつれて、役割の変化もありましたが、マネイロについては、今も私自身が事業としての全体を管理し続けています。ただ、そろそろこのマネイロのプロダクトマネジメントについても、専任のプロダクトマネージャーに引き継いでいきたいと考えています。そして、プロダクトマネージャー、FAの統括マネージャー、そしてマーケティングディレクターという三頭体制で運営していきたいと考えています。
私自身はステークホルダーとして、それを管理監督する体制を作っていきたいと思っています。プロダクト部門については、弊社ではまだまだ育てていかなければいけない部門です。だからこそ、営業部門やマーケティング部門と議論をしながら進めていける人を採用したいと考えています。
どんな方に入ってもらいたいと考えていますか?
私としては、プロダクトマネージャーでありながらも、経営目線がある方がいいなと思っているんです。なぜかというと、やはりマネイロを担当するためには、関わる部署も人も多く、バランス感覚が必要になってきます。全体最適を考えて、センターピンを見極めた施策を打てる方と仕事をしたいです。
ただ、CTOの塚田が言っていた言葉を借りると、「プロダクトマネージャーはいいプロダクトを作るべき」ということもまた事実でもあります。マネイロは、システムを売っているわけでも、SaaSを売っているわけでも、アプリ会社でもなくて、サービスを提供しているんです。
「サービスや顧客体験は非常に秀逸だけど、実はまだまだプロダクトが追いついてない感覚がある。まだまだそこまで作りこめていない」と、塚田は言うんですよね。もちろん、彼がストイックだということもあるのですが、既に秀逸なサービスに合わせて、「プロダクトも秀逸だよね」って誰もに思われるようなプロダクトを実現したいですし、そこまでコミットできる人に来てもらえたらいいなと思っています。
なるほど。プロダクトについては、具体的にどのような改善していくことを思い描かれていますか?
今マネイロは、新規のお客様がどんどん入ってきてくださっています。ただ、資産運用は20〜30年かけて行うものです。その長い期間を、ちゃんとお客様とのタッチポイントを維持しながら、つかず離れずでちゃんとサポートしていける環境を整えていきたいと思っています。
例えば、お客様専用のマイページをよりアクセスしやすくしたり、お客様の要件にしっかりと応えられるようにしていきたいです。会社として、チームとして、お客様をサポートできるような形がすでにできてはいるので、組織の発展とマネイロの機能の発展を合わせてやっていく必要があると思っています。
最後の質問になりますが、マネイロを今後どのようなサービスにしていきたいと考えておられますか?
マネイロは直接人が関わる温かいサービスであることと、インターネットを使った利便性との両軸があるからこそ、ありがたいことに多くの方に必要としていただいていると思っています。多くの方のお金に関する意思決定をサポートするために、そのサービスの在り方にはさらに力を入れていきたいですね。
また、先ほどお伝えしましたように、働く世代はお金の密集地帯だからこそ、その世代に今は注力していますが、しっかりとカバーした上で、今後は周辺の世代にも対象を広げていきたいと思っています。資産運用についての課題を抱えている人は、世代も背景も問わず、本当に大勢いらっしゃるので、よりプロダクト開発に力を入れることで、サービスを拡大し、多くの方のお金にまつわる課題を解決していきたいですね。