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【ROAD to EXPO 前編】万博って、スタートアップ企業でも出られるんですか?
モニクルグループの原点、「金融教育」でエントリー

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2025年7月28日(月)、株式会社モニクルは、大阪・関西万博の「TEAM EXPOパビリオン」プログラムに、展示・ステージ発表という形で参加しました。『つながる万博』をコンセプトに、これまでの成果を発表するとともに、来場者、出展者同士など多くの方と「対話」し、未来社会の実現に向けた新たな「共創」を生み出すことを目指すプログラムです。

万博という場に参加することで、会社として社会にどのような価値を届けることができるだろうか。大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に、「金融の力で、安心を届ける。」をグループ全体のミッションとするモニクルにふさわしい共創テーマとは何か。その問いの答えとしてモニクルは、金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」を開発・提供する活動をスタートしました。

語り手は、ポッドキャストのパーソナリティーを務めた、当社取締役・証券アナリストの泉田良輔です。モニクルグループの共同創業者でもある泉田ならではの「金融教育」への思いも込めて、モニクルの万博への道「ROAD TO EXPO」を、3回にわたってお伝えします。さて、始まりは2024年秋のこと。怒涛の日々の幕開けでした…。

遠かった万博がいきなり自分ごとになった瞬間

2024年の8月末頃だったかと思う。

当社広報の村岡さんから、定例のオンラインでの1on1の時間に、

「泉田さん、来年の夏に行われる大阪の万博に出てみたいですか?」

と聞かれた。村岡さんは大阪出身で笑い上戸な人だ。笑うときは「あははは」と笑う。ただ、仕事中はあまり冗談などは言わない。関西弁もほとんどでない。とてもまじめな人だ。そんな村岡さんからの、想定していない質問で戸惑ったが、真剣に聞かれているのだと思い、

「えっ?万博って、スタートアップが出られるもんなの?」
「各国のパビリオンやトヨタとかパナソニックみたいな大企業が出展できるけど、スタートアップや個人では出られないでしょう?」

と立て続けに聞き返した。すると村岡さんは、

「確実に出られるかはわかりませんが、審査にパスすれば出られるかもしれません」

と相変わらず真面目な顔をして返答した。

万博といえば、2005年に開催された、愛知万博(正式名称:2005年日本国際博覧会)に行ったことはあるが、そんな場面は記憶にはない。ただ、今回新たに設定されたものかもしれないと思った。私としてはにわかには信じがたい。ただ、万博なんてそんなにめったに日本であるものではないし、大変貴重な機会に変わりない。

「出られるなら出たいと思います。」

と答えた。すると、村岡さんは

「わかりました。では申請に向けて準備する必要がありますね」

とこともなげに答えた。これはいつものやり取りだ。いつもこうして次のステップに進む。

「で、審査って、何をすればいいの?」

と聞き返した。すると村岡さんは、

「今回は、「TEAM EXPOパビリオン」という枠が準備されているようです。これは、大企業が出展するようなパビリオンのようなものではなく、特定の日時に展示や発表ができるようです。万博のテーマに沿って、我々がどのような取り組みをしていくのかを審査員の前でピッチをして、そこでの審査を通過すれば発表ができる機会がもらえるみたいです。」

と答えた。なるほど、主催者側だけではなく、テーマに共鳴したステークホルダーを幅広く募ろうという企画だなと思った。今っぽい。

「で、万博のテーマってなんだっけ?」

とあらためて聞いた。村岡さんは、調査が得意で(少なくとも私はそう思っている)、いつ調べたんだろうと思うくらい調べるのが早い。そんな村岡さんは、すでにある程度は今回の応募について調べていたのだろう。

「いのち輝く未来社会のデザインです。」

とさらっと答えた。

「いのち輝く未来社会のデザイン」

自分で復唱してみた…。ただ、この時点では万博のテーマを自分たちの事業に結びつけることができないでいた。今回の万博といえば、やはり「ミャクミャク」がみんなの印象に残っているのだと思う。私も同じだ。

「ミャクミャク」が最初にデザインとして表に出てきたとき、その異様なデザインに様々なコメントがSNS上にあふれていたのは記憶に新しい。そのせいもあってか、「細胞」や「水」というような要素が盛り込まれたという話はなんとなく頭に残っていた。ただ、個人的には「バイオ」をテーマにした万博なのかな?とも思っていた。

万博のテーマを、金融サービスを中心とする当社の事業とどのように結びつけることができるのだろうか。当社の「TEAM EXPOパビリオン」プロジェクトへの参加準備は、そんなところから始まった。

村岡さんは、毎回いろいろな企画を持ってくる人なのだが、毎回といってよいほど締め切りが間近な案件を持ってくる。

今回も例外ではなかった。急がねば。

GB室で企画のブレストが始まる

当社の広報はグループブランディング室(通称GB室)に属している。

GB室はスタートアップ企業である当社グループの取り組みを、より多くの方に知ってもらうために日々活動をしている。会社の認知度が上がれば、大企業との提携が進みやすくなったり、採用活動がしやすくなるといったメリットがある。

また、その活動は社外に向けてだけではなく、社内にもベクトルは向いている。当社グループは金融サービスや金融メディアの運営を事業の中心としているので、金融に詳しくない人が、「詳しくなれる」と期待して入社してくることも多い。

そうした社員向けに少しでも貢献したいということもあり、これまでにもオンラインで私のiDeCoの運用結果などを事例に「資産運用セミナー」などをGB室が主催していた。

また、イントラネットを通じて、社員向けポッドキャストプログラム「モニクルラジオ」をスタートし、その中で、私が資本市場の話をカジュアルに話をするなどのコンテンツを出していたりもした。

GB室の企画担当者には、広報の村岡さんのほかに、どんなプロジェクトもきっちり進行してくれるディレクターの穂積さんと、採用から金融までと幅広いテーマでも質の高いコンテンツ制作ができる高村さんがいる。毎回、新しい企画はこの3人のメンバーで進めることになる。

GB室の定例の会議で、3人にあらためて万博へ参加しようと思うことを伝えた。

「村岡さんから、万博に出られるような機会があるという話を聞きました。またとない機会なので、当社も参加してみたいと思います。万博のテーマに沿って、うちがどんな企画で申請できるか考えてもらってもよいでしょうか。」

穂積さんと高村さんの最初の質問は、私と同じだった。

「万博のテーマってなんでしたっけ?」

村岡さんは、僕に答えたときと同じように

「いのち輝く未来社会のデザインです。」

と答えた。穂積さんと高村さんの反応も、またもや私と同じだった。

「いのち輝く未来社会のデザイン…会社として何を企画できるかですかね…?」

ただ、こういう時は彼らに任せておけばいい。GB室は普段から会社やグループ全体を見て仕事をしているし、何より全力でいろいろと考えてくれる。頼もしいチームだ。

しばらくして、だれが口火を切ったかは忘れてしまったが、3人から次のような意見が出た。

「うちの会社の原点は金融教育ですよね。モニクルグループの中で最も歴史のあるモニクルリサーチが創業時から投資情報の格差を埋めるためにメディア事業を始めたのがきっかけですし、社内向けにモニクルラジオをやっていてみんなに好評じゃないですか。これを社外に展開するというのはどうでしょうか?」

「お金の話は人生の中でも大事な話です。ただ、お金は、自分がやりたいことで輝くための手段ではありますが、日本の金融教育が十分ではないという現実があります。『いのち輝く未来社会のデザイン』には金融教育が必須ではないでしょうか?」

「ポッドキャストは、いまや若い世代に人気のメディアです。ポッドキャストで若者向けに金融教育コンテンツを提供するというのはどうでしょうか?」

なるほど、GB室の社内向けの「モニクルラジオ」を延長して、外部の若者向けに情報発信するというのは、グループのミッションとして取り組む価値のあることだ。そしてもちろん、グループのブランディングとしても意味がある。

こうした議論を経て、2024年10月に、大阪・関西万博の事務局へ企画書を提出することになった。書類での審査は無事通過し、審査会は11月15日と決まった。

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大阪での審査会

2024年11月15日の午後、当初は大阪・梅田で村岡さんと待ち合わせて、現地に行く予定にしていた。しかし、待ち合わせ前の私の社内での打ち合わせが長引いてしまったことと、また巨大な梅田駅、通称「梅田ダンジョン」を軽く見過ぎ、約束の待ち合わせ時間に間に合わないということがわかった。

村岡さんとは審査会場がある淀屋橋駅であらためて待ち合わせることにし、無事落ち合ったものの、審査会の時間のぎりぎりの到着となってしまった。二人は急ぎ足で三菱UFJ信託銀行大阪ビルの1階にある「MUIC Kansai」イベントスペースに急いで向かった。11月にもかかわらず、慌てていたので、汗ばんでいたのを覚えている。

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審査会場には、すでに他の登壇者やEXPO事務局の関係者が集まっていた。我々が参加した当日のピッチ登壇者は、関西に拠点のある企業の担当者や大阪大学の研究室の教授らが集められていた。合計5から6チームぐらいいたかと思う。

また、聴衆としても自由に参加できるようで、地元の劇団の責任者やこのプログラムに興味がある京都の金融機関の担当者などが事前の調査もかねて参加していた。我々が参加した以外の日程でも同様のことが行われていたようではあるが、どういった基準で参加者がグループ分けされていたかはわからない。

ピッチは各自発表時間は3分が与えられており、その短い時間内にそれぞれが「共創チャレンジ」としての取り組み内容の説明をし、その後に審査をする事務局やそれ以外の参加者などからの質疑応答のセッションがあるという形だ。

発表内容によって質疑応答の数は異なっていたものの、全体的にフレンドリーな空気感だった。一般的にはなじみのない内容であっても、事務局が事前に準備してきていたであろう質問を投げかけると、その後は参加者からも質問があがる雰囲気であった。

事務局のメンバーとも話をしたが彼らはいわゆる大企業からの出向者で、審査会の場回しも手慣れたものであった。事務局がそうした環境を整えてくれていたこともあり、金融教育という一見、堅苦しい内容を発表しても問題なさそうだと、発表前には少し安心していたくらいであった。

そんな中、私に発表の順番が回ってきた。我々の共創チャレンジの取り組み内容、その後に会社の概要も説明した。

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ちょうど審査会で発表するタイミングで、社内向けポッドキャスト「モニクルラジオ」を開始していたことと、また翌年の2025年1月から「FINANCE 101」という金融に関する基礎的な話をするプログラムを始める予定になっていたことをポッドキャストの事例として取り上げた。万博に参加するプログラムについては、新シリーズとして若者向け金融教育ポッドキャストとして展開していくという話をした。

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今回の「TEAM EXPOパビリオン」プロジェクトは、万博に参加して終わりではなく、その後も活動を続けていき、未来社会のデザインと実行を計画に入れるということが特徴だ。

万博のような大型イベントは以前から「ハコモノ」と揶揄されるように、一過性のものとしてのイメージが多くの人の中で残っている。

今回の万博はそうした点を考慮しているのと思われるが、万博後もその企画が生き続ける持続性(サステイナビリティ)を埋め込んだ提案を求められていたと思っている。当社のピッチでも、万博閉幕以降、どのように活動していくかを織り込んで発表した。

金融教育は、グループのミッションとして「一丁目一番地」

正直、自分たちの得意な領域の話をしただけかなという思いがあったので、そこまで質疑応答もないだろうと思っていた。ところが、事務局や他の参加者の反応は大きく違っていた。

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「このポッドキャストはいま聴けるんですか?すぐにでも聴いてみたいです!」

「娘が大学生なので、このコンテンツを聴かせたいのですが、どこで聴けますか?」

「このポッドキャストは有料なんですか?無料なんですか?」

「うちの研究室の学生が投資に興味があっていろいろな投資をしていますが、体系だって勉強していないと言っていたので、興味を持つと思います。紹介してもいいですか?」

「金融機関として一緒に何か取り組みをしたなと思うので、またご相談させてもらってもいいですか?」

自分たちの期待値とは裏腹に、金融や投資について知りたいという熱量が伝わってくる質問が多く寄せられた。当社グループは、2013年に「金融リテラシーを底上げするメディア」を立ち上げたところからスタートした。

今は、国もJ-FLECなどを立ち上げて力を入れている「金融教育の推進」をミッションとするメディアは、当時は間違いなく、かなり物珍しい存在だった。日本経済新聞社の取材などがあったほどだ。

2013年の創業当時から今に至るまで、グループのミッションとして金融教育が「一丁目一番地」であることには変わりはないが、10年経過してみて思ったことは、金融リテラシー、金融教育への関心は大きく高まったと感じた。

審査会での手ごたえを感じながら、東京に戻った。後は、審査結果を待つのみだ。

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株式会社モニクル
取締役 グループ戦略担当

泉田 良輔 Ryosuke Izumida

慶應義塾大学卒業後、日本生命保険、フィデリティ投信で外国株式や日本株式のポートフォリオマネージャーや証券アナリストとして勤務。2013年3月、株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を共同設立し、取締役に就任(現在は代表取締役)。2018年11月、株式会社OneMile Partners(現:株式会社モニクルフィナンシャル)を共同設立し、取締役に就任。2021年10月、ナビゲータープラットフォームとOneMile Partnersの親会社として、株式会社モニクルを設立し、取締役に就任。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。東京科学大学大学院非常勤講師。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。著書に「銀行はこれからどうなるのか」「Google vs トヨタ」「機関投資家だけが知っている『予想』のいらない株式投資法」など

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