音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第38回の「資産形成商品#9「金融派生商品」、デリバティブって何?饅頭で例えると、「あんこ」が原資産で、皮がデリバティブ【第38話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
デリバティブには、ハイリスク・ハイリターンを狙う側面があり、理解が不十分な状態で挑戦すると、大けがをする可能性があります。
デリバティブを活用した投資信託は、新NISA制度では除外されています。投資初心者の方は、知識として「こういう特徴があるんだ」と知っておくだけで良いでしょう。
レバレッジとは「てこ」を意味します。「小さな力で大きなものを動かす」のがてこの原理ですね。金融におけるレバレッジは「少ない自己資金をもとに、より大きな額の取引をする」ことを指します。ブル型・ベア型ファンドはまさにこの原理を活用し、手元資金以上の運用で数倍の利益を目指すファンドです。
普通に100万円の株式を買う場合には、100万円が必要になりますよね。でも、デリバティブ取引の金融商品の場合、購入時点では一定の割合の保証金を払えばいいルールとなっています。例えば、100万円の株式を買う場合、保証金として20万円を支払えば取引ができるようなイメージです。
実際に持っているお金以上の金額で取引するため、自己資金を超える損失が出るリスクがあります。その場合には、自己資金がなくなるだけでなく、場合によってはその損失をカバーしなくてはいけません。
この「自己資金を超える損失をカバーする」というリスクは、証券投資やFX投資で言うところの「追加証拠金」(追証:おいしょう)という形で発生することがあります。
また、デリバティブ商品には「所有できる期限」があります。通常の株式投資であれば好きなタイミングで売却したり、売らずに持ち続けたりできます。デリバティブの場合は「何月に売る」という約束をしたり、購入日が決められていたりします。
はい。デリバティブは「金融派生商品」といいます。商品を意味する言葉ですが、金融商品の「取引手法」の意味で使われることもあります。
デリバティブは、「派生した」という意味の英語〝derivative〟に由来しています。あくまでも「派生した」商品なので、元となるものがないと成立しません。
その通りです。「饅頭」に例えると、中身のあんこが「原資産(元となる金融商品)」で、そのあんこを包んでいる皮が「デリバティブ」です。
まず、あんこの種類を見ていきましょう。例えば、日経225先物、TOPIX先物、NYダウ先物など、インデックスに連動している先物商品や、国債など債券の先物など、一般的な金融商品に派生する商品があります。
また、コモディティと呼ばれる領域で、金やプラチナなどの貴金属、とうもろこしや小麦などの農産物、ガソリンや石油、電力などのエネルギーなどもあります。これも、あんことなる原資産です。
そういった原資産(具体的な商品そのもの)を売買するのが、これまでにお話ししてきた投資です。
デリバティブは、その商品を「〇年〇月に売買する」という未来の権利を売買したり、未来の売買を約束したりします。そういう成り立ちなので、元の商品から派生して生まれているというわけです。
また、派生の仕方として以下の3種類があります。
- 先物取引
- オプション取引
- スワップ取引
「先物取引」は、将来のある時点の価格を予想して、売買する約束をする取引のことです。これは約束なので、売り手も買い手も、必ず履行する必要があります。
「オプション取引」は、将来の決められた日に、決められた価格で売買する権利の取引のことです。買い手は、事前に「オプション」という費用を売り手に支払います。「買う権利の売買」と「売る権利の売買」、どちらにも買い手と売り手がいて、買う権利を「コール」、売る権利を「プット」といいます。
先物取引とオプション取引の違いは、「将来の取引に義務があるかどうか」という点です。
たとえば、コーヒー豆を1kgあたり2000円で買うコールオプションを持っているとします。
権利を行使する時点で、コーヒー豆1kgの時価が5000円になっていれば、3000円の利益になります。
一方で、価格が1000円まで下がっていた場合、2000円では買うのは損なので、オプションを放棄することができます。オプション料は無駄になりますが、それ以上の損失を避けられます。
ですが、先物取引の場合は、たとえ価格が1000円でも、あらかじめ約束した2000円で必ず買う必要があります。
オプション取引で、コールオプションの買い手は行使か放棄か選択できますが、売り手は、買い手の選択に従う必要があります。
売る側としては、2000円で売る約束をしていた場合、時価が5000円になったら3000円損してしまいますよね。デリバティブのオプション取引には、このようなリスクがあります。
ちなみに、この「オプション」という、売買の権利の価格のことを「プレミアム」といいます。プレミアムは相場と同じで、需給バランスに応じて日々値段が変動します。
生命保険などの保険料も英語では「プレミアム」です。保険も同じ考え方で、被保険者が将来不安なイベントに対して保険料を支払い、保険会社がそのリスクを引き受けています。そして、被保険者に不慮の出来事が起きると保険金が支払われます。
何もなければ被保険者は保険料を支払いっぱなしで、いわゆる掛け捨てという状況になり、保険金は入ってきません。こう考えると、保険もオプション取引の一種ですね。
「スワップ取引」のスワップは「交換」という意味で、将来のキャッシュフローの交換ということです。金利スワップや通貨スワップなどがあります。金融機関やグローバルで事業をする法人などが活用しています。
基本的には、デリバティブといえば、知識として先物取引とオプション取引を知っておくとよいでしょう。
デリバティブ商品を購入したい人は、証券会社で口座を開設したら買えます。ですが、取引されている場所は、東証ではありません。日経225やTOPIXの先物なども、「大阪取引所(大証)」がメインです。
話は少しそれますが、組織的な取引所の始まりといわれるのが、江戸時代の大阪堂島の米市場で、それが現在の大証です。
以前は「大阪証券取引所」という名前で証券を扱っていたのですが、いまは先物取引などデリバティブを扱う取引所になりました。
堂島の米市場は、世界規模で見ても「先物取引所のはしり」といわれています。お米の収穫量は天候によって変動し、価格も変わります。そのリスクを避けるために、仕入れる側と売る側が、お米の価格をあらかじめ決めていたんです。
「堂島コメ平均」というお米の先物指数も少し前にできました。大阪取引所とはまた別の、堂島取引所に上場しています。
いえ、個人投資家もいます。コモディティ取引では、必ずしも現物をやりとりする必要はありません。
最近では「CFD」も認知度が上がりました。これは「差金決済(Contract For Difference)」といって、デリバティブ取引を通して差額のみを決済するものです。
現物取引という意味では、穀物などの食品や金属、エネルギーなどを商社などが先物取引をすることが多いです。食品メーカーなども対象になりますし、航空会社が燃料調達することもあります。
企業にとっては、あらかじめ価格が決められるので、コスト管理しやすくなるメリットがあります。これがデリバティブの本質的な使い方なのではないかと思います。
また、デリバティブの対象となるコモディティは、国産品にとどまらず、海外からの輸入品にも適用されます。
金融も歴史とからめると面白いですよね。聞きなれないかもしれませんが、最近は「天候デリバティブ」という商品もあります。
降雨量や降雪量、気温、湿度、風速などを指標として、気象の変化によって、一定の補償金が支払われる金融商品です。
たとえば雨で損失が出る事業の場合、「雨が降れば補償金がもらえる」という契約をすることで天候リスクに備えることができます。この商品は法人を対象に、損害保険会社が取り扱っています。
通常の損害保険の場合、具体的な被害があると保険金が支払われますが、天候デリバティブは「雨が降る」「晴れる」など、その事業にとって損害が出る条件を満たせば補償金が払われます。
そうですね。冒頭の話に戻りますが、デリバティブにはハイリスク・ハイリターンな傾向もあり、個人の投資という観点では、あくまでも応用編です。ですが、起源をたどると、特にコモディティの先物取引は身近なものとしても想像しやすく、よくできているシステムだと思います。