投資信託を知ろう!①投資信託って、どんな金融商品?証券会社や信託銀行の役割とは? 【第27話】
金融分野共通#19

ポッドキャストを聴く(資産形成商品#1 投資信託を知ろう!①投資信託って、どんな金融商品?証券会社や信託銀行の役割とは?【第27話】)
はじめに
音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第27回の「資産形成商品#1 投資信託を知ろう!①投資信託って、どんな金融商品?証券会社や信託銀行の役割とは?【第27話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
プロの運用で資産形成ができる「投資信託」
今日のテーマは「投資信託」です。先日、新NISA制度の「つみたて投資枠」対象の投資信託一覧を見たのですが、仕組みが少し分かりづらいように思いました。
投資信託は、簡単にいうと「金融のプロフェッショナル(プロ)が運用する金融商品」です。アクティブファンドは、ファンドマネージャーやポートフォリオマネージャーというようなプロが運用している人は多いかもしれませんが、インデックスファンドも金融機関に勤務するクウォンツと呼ばれる金融のプロが管理しています。まず、投資信託協会の定義を見てみましょう。
投資信託(ファンド)とは、
「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品」
「その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」
つまり、「投資家から集めたお金をプロが運用し、さまざまな金融商品に分散投資し、得られた利益を投資家に分配する仕組み」を持つ金融商品だということです。
投資家にとって、投資信託には以下のようなメリットがあります。
- 100円から投資できる商品もあり、少額で投資が可能
- ファンドマネージャーという金融のプロが運用してくれる
ファンドを運用するファンドマネージャーの仕事とは
泉田さんは以前、「ポートフォリオマネージャー」をされていましたが、「ファンドマネージャー」とはどう違うのでしょうか?
金融業界では、ほとんど同じ意味で使われています。「ファンド」とは「資金が集まったもの」を指しますが、ファンドマネージャーは、その資金を預かって資産運用をする責任者です。リスク管理を日々行い、高いリターンを目指しています。
投資信託は、「この株式と債券の組み合わせで投資信託を作ろう」「海外銘柄と日本銘柄を半分ずつにして、さらにこの企業の株を入れて…」といったプロセスを経て、商品設計されます。
投資信託の設計から運用には、ファンドマネージャー以外にも、個別の銘柄を分析する証券アナリストや相場の方向性を総合的に分析し、判断するストラテジスト、時には経済の状況を分析するエコノミストなどさまざまな専門家がチームで関わっています。
一方で、ポートフォリオマネージャーは、個別のファンドだけでなく複数のファンドを担当したりします。一つのファンドを複数のポートフォリオマネージャーで運用することもあります。ですが、両者の使い分けに厳密な違いはないのが現場の感覚ですね。
泉田さんのプロフィールに「日本株式、海外株式のポートフォリオマネージャー」という記載がありますが、株式のみで構成されるファンドを担当されていたのでしょうか。
そうです。投資信託には債券、不動産(REIT)、金などがミックスされる商品もありますが、私は株式のみで構成されるファンドを担当していました。
証券アナリストは、その中でどのような役割なのでしょうか。
証券アナリストは、今後値段が上がりそうな株や債券を探します。「この業績だと、将来これくらいになるので、いま買った方が良い」とか、下がっている株や債券に対して「本来この商品の値段は〇〇円なので売りましょう」など、数字に基づいた投資判断を行います。
このような判断を踏まえて、投資信託のポートフォリオ構成比を変えたり、ポートフォリオに含まれている銘柄の売買タイミングを決めるのが、ポートフォリオマネージャーやファンドマネージャーです。
ポートフォリオマネージャーは、どんな一日を過ごしているのか教えてください。
朝は早いです。海外の市場動向を毎朝確認して、自分のポートフォリオがそのままでいいのか、変えた方がいいのかを検討します。
余談ですが、私自身もその時の習慣がいまだに抜けないので、朝4時くらいには起きて、海外のニュースをチェックしたりしています。
気になる銘柄については、社内の担当アナリストにヒアリングしたり、証券会社のアナリストに問い合わせたりします。
企業や業界の業績や、市場の動向、世界の状況などを情報収集して、リスクとリターンを予想します。「リスクは高めだが、こういう投資信託を作る銘柄を組み入れるとよさそうだ」とか、「バランスをとって、このポートフォリオ構成でしばらく運用しよう」などのように判断しています。
複数のファンドを担当している場合は、それぞれのファンドのコンセプトを考慮したうえで、適切な投資戦略を考えたりもします。
日々、取材を通して経営情報を集めたり、経済の動きをキャッチしたり、さまざまな情報を総合的に判断しながら、投資信託は運用されているんです。
増え続ける投資信託を適切に選ぶために
以前に、投資信託は5000種類くらいあるというお話をお聞きしました。
投資信託は基本的に長期運用を目的に設計されているため、一度作ったファンドは簡単にクローズできません。その結果、短期的に新陳代謝を行えず、商品が増え続けてしまうという問題点があります。
選択肢が多いことは、消費者にとって悪いことではありませんが、多すぎて自分では商品を選べないという人もいます。そのため、新NISA制度の対象となっている投資信託は、金融庁が基準を決めたり、商品を選んでいるんです。
金融庁が基準を設けてくれるのは安心ですね。
投資信託の仕組みと6つの役割
それでは、投資信託という金融商品に関わる用語や登場人物を整理しておきましょう。
- ファンド(投資信託)
- 投資家
- 運用会社(委託会社)
- 信託銀行(受託会社)
- 証券会社や銀行(販売会社)
- 金融市場
さまざまな人が携わっているんですね。
それぞれの関係性を、お金の流れを含めて、役割を理解しながら整理していきましょう。
まず、投資家は「販売会社(証券会社や銀行)」で口座を開設して、投資信託を購入します。
口座の開設は、投資信託をどこで購入するかを決めるということですね。
はい。販売会社が、投資家に「こういう投資信託がありますよ」と紹介してくれます。皆さんが投資信託を購入すると、そのお金がファンドに流れます。
そのお金で、運用会社(委託会社)の指図(株式や債券などの売買を指示すること)に基づき、証券会社に売買の依頼を行います。信託銀行(受託会社)は、売買に必要な手続きを行い、ファンドのお金や、そのお金で売買された株式や債券などの管理をしています。
投資家のお金や、投資された金融商品そのものは、販売会社ではなく、信託銀行で保管されているんですね。
信託銀行には、投資家から集まったお金をしっかり管理し、投資家を守る役割があります。
実は、皆さんが販売会社に開設した口座も、信託銀行の中で管理されています。「分別管理(ぶんべつかんり)」といいます。
万が一、販売会社である証券会社や銀行が経営破綻しても、信託銀行の中で資金は守られます。また、信託銀行の財産とは分けて管理されているため、たとえ信託銀行が破綻しても、投資資産は守られます。
運用会社や販売会社が、ファンドの資金を勝手に操作できない制度になっているんです。
信託銀行は、資産を預かっている金庫のようですね。
そうですね。投資信託は目に見えない商品ではありますが、形のある商品だと仮定すると、「運用会社が商品を作るメーカー」「信託銀行が倉庫」「販売会社が代理店や小売店」のイメージです。
そして、先ほど登場したファンドマネージャーやポートフォリオマネージャーが所属しているのは、「運用会社」です。
運用会社には「アセットマネジメント」という名称がついていることが多いです。運用会社が投資信託を企画開発し、販売会社に卸します。そして、販売会社が投資信託を投資家に売ることで資金調達します。投資家が投資信託を買ったら、お金は信託銀行が管理します。
その貯まったお金の運用を、運用会社が実行します。運用会社はその実行の中で、証券会社に証券売買の発注をし、証券会社を通じて売買された資産を信託銀行が管理しています。金融市場が動くと、投資信託の基準価額が変わります。このような流れになっているんです。
登場人物がたくさんいましたが、理解できました。
第27話のまとめ
- 投資信託は、運用会社が設計し、証券会社や銀行を通じて投資家に販売される
- 投資信託の購入代金は、信託銀行に預けられ、運用会社の運用指示に基づき投資が行われる
- 投資信託は、ファンドマネージャーや証券アナリストなど多くのプロが、市場や企業情報をもとに戦略を立て運用されている
パーソナリティー:泉田良輔プロフィール

株式会社モニクル
取締役 グループ戦略担当
泉田 良輔 Ryosuke Izumida
慶応義塾大学卒業後、日本生命保険、フィデリティ投信で外国株式や日本株式のポートフォリオマネージャーや証券アナリストとして勤務。2013年3月、株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を共同設立し、取締役に就任(現在は代表取締役)。2018年11月、株式会社OneMile Partners(現:株式会社モニクルフィナンシャル)を共同設立し、取締役に就任。2021年10月、ナビゲータープラットフォームとOneMile Partnersの親会社として、株式会社モニクルを設立し、取締役に就任。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。東京科学大学大学院非常勤講師。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。著書に「銀行はこれからどうなるのか」「Google vs トヨタ」「機関投資家だけが知っている『予想』のいらない株式投資法」など。