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本邦初の金融サービステック企業「モニクル」ができるまで【2018-2019年】原田慎司CEOに聞いてみた|特集|モニクルプラス

作成者: モニクルプラス編集部|2023.03.03

デジタルとリアルの融合を目指したワンマイルパートナーズの狙い

ではワンマイルパートナーズの設立の狙いについて教えてください。

2018年11月にワンマイルパートナーズを設立しましたが、私と泉田で新たに会社を設立するにあたって大事にしようと思ったことが2つあります。

1つは、エンジニアを採用してテクノロジーがけん引するようなビジネスにしようということ。

もう1つは、リアルのロケーションで人によるサービスを大事にしようということです。

前回にお話をしたナビゲータープラットフォームはLongineやLIMOといったネットメディアを運営する会社でしたが、社内にエンジニアはいませんでした。

開発リソースを社内に抱えないことは経営としては身軽ではある一方、メディアの改修などに時間がかかり、経営にスピード感が出ないもどかしさが常にありました。

また、メディアだけではサービスとして深いところまでお客様と関われないため、デジタルの世界だけではなく、リアルの世界にも踏み込んでサービスをすることを大事にすることにしました。

つまり、金融サービスにおけるデジタルとリアルの融合ということでしょうか。

はい、そうですね。

この辺りは、泉田が2017年4月に執筆した「銀行はこれからどうなるのか」でうまく図にしてます。詳細はそちらを参照していただきたいのですが、我々としてはモバイル型(第1象限)とプライベートバンク型(第2象限)の丁度重なり合うところを意識していました。



泉田の著書は銀行に関して話が展開されていますが、お客様にご提案する金融商品が投資信託、株式、債券といった有価証券や保険であっても同じことがいえると思います。

個人向けの金融サービスをしようと思っても、我々のようなベンチャー企業は大手メディアやプラットフォーマーのようなタッチポイントは取れないでしょうし、会社を立ち上げてすぐに大手金融機関のように豊富な人材は確保することも難しいです。

したがって、第1象限と第2象限の「汽水域」を攻めることにしました。それがワンマイルパートナーズのポジショニングです。ワンマイルが「コンテンツとテクノロジー、そして人の力で、新しい金融サービスを発明する」とうたっているのはそうした背景からです。

余談ですが、泉田の著書は2017年当時斬新だったらしく、大手金融グループの役員クラスの方が何人も意見を聞かせてほしいと来社されたのを覚えています。

そうした反応を知った上で2018年にワンマイルパートナーズを設立していますので、タイミングはばっちりだと思っていました。ただ、その後のことを考えると物事は必ずしもうまくいかないことを経験することになるのですが(笑)

ワンマイルパートナーズのデジタルとリアルの取り組みについて具体的に教えてください。

ワンマイルパートナーズはデジタルマーケティングで集客をしています。これは創業時から全く変わっていません。

私たちは、コンテンツマーケティングも含めてデジタルマーケティングととらえており、必ずしも広告ばかりが集客ルートではありません。

特に、ワンマイルパートナーズが運営する「マネイロ」のコンテンツマーケティングを通じて、多くのお客様とのタッチポイント獲得に成功しています。

一方、リアルについてのとらえ方はコロナ禍前後で大きく変わりました。

ワンマイルパートナーズを設立した当初は実店舗を展開することでお客様の資産形成や資産運用のご相談に応じていました。

実際、私たちは2019年11月27日に東京・丸の内仲通り沿いの国際ビル1階に「丸の内本店/スタジオ」をオープンしています。証券会社や保険会社の関係者もお呼びして、開業イベントを開催しました。本当に懐かしいです。

また、ワンマイルパートナーズは丸の内本店/スタジオ、近くのホテルや商業ビルの会議室で定期的にマネーセミナーを行っていました。週に2回程度、1回1時間半に渡り、泉田や社員が資産形成の始め方について話をしていました。今でいう「リアルセミナー」です。

しかし、2020年に入ると皆さんご承知のように新型コロナウイルス感染症の影響により、店舗やセミナー会場にお客様に足を運んでいただいて、長時間の面談やセミナーは難しい状況となりました。

実店舗でお客様をお迎えできたのは店舗オープン後数か月くらいでした。2020年2月には横浜港のダイヤモンド・プリンセス号の話は出ていましたし、4月になると東京都の緊急事態宣言などを受けて、店舗も休業とせざるを得ませんでした。

もっとも、店舗を開けていたとしてもお客様も来られなかったでしょうし、マネーセミナーも行える状況ではありませんでした。

そうした集客やサービスの先が見通せない中、役員で散々議論しました。この苦労話は別に機会を設けてお話ししますが、話し合った末、2020年4月から5月にかけて、これまでリアルで行っていたセミナーと、店舗で行っていたお客様の面談をオンラインでできるようにしようと決断しました。

社内に優秀なエンジニアがいたため、セミナーも面談も実現できちゃいました。今でいうDX(デジタルトランスフォーメーション)を数ヵ月で実行したことになります。ワンマイルパートナーズを設立する時の「自社でエンジニアを採用する」という方針が功を奏しました。

新型コロナウイルス感染症拡大によって、店舗やセミナー会場といったリアル・ロケーションは断念せざるを得ませんでした。

しかし、デジタル空間でもリアルで接客を受けているようなユーザー体験を提供できるように日々現場は改善を続けています。

エンジニアとの出会いはブロックチェーンプロジェクトだった

優秀なエンジニアを採用することは難しかったのではないでしょうか。

結論からいうと、現在モニクルのCTOである塚田翔也との出会いが大きかったです。

塚田は前職で別のIT企業でCTOを務めていましたから、ワンマイルパートナーズへの入社は設立されてから少し時間が経ってからとなりました。

ただ、塚田の入社後ほどなく、彼が信頼するエンジニアである伊藤功馬と和田太陽の2名が入社し、ハイレベルなエンジニア3人体制になりました。

CTOの塚田さんとはどのように知り合ったのでしょうか。

塚田との出会いは2017年にまで遡ります。

2017年にナビゲータープラットフォームで、京都や金沢で町家をリノベーションし宿泊施設にしている企業との出会いがあり、集客をメディアを通じてできないかという話がありました。

ただ、お互いメディアで集客するだけでは面白くないなという話になり、当時話題になっていたブロックチェーン技術を使って世界中のユーザーにリーチして町家を盛り上げたいという話になりました。

その時にプロジェクトをボランティアでリードしてくれるエンジニアはいないかと探していたところ塚田に行きつきました。

結果としてはそのブロックチェーンプロジェクトは途中で断念する結果になりましたが、塚田が複雑になりつつあったプロジェクトのマネージャーとして誘ってくれたのが現在モニクルのCOOである瓜田雅和です。塚田と瓜田は昔からの知り合いでした。

ということは、そのブロックチェーンプロジェクトがなかったら今のモニクルはなかったということでしょうか。

まあ、そういうことになりますね(笑)

塚田はその後もワンマイルパートナーズでエンジニアの採用を頑張ってくれました。また、エンジニアだけではなく、デザイナーやプロジェクトマネージャーの採用も積極的に行ってくれて、今のモニクルの体制ができています。

ワンマイルパートナーズ設立後の苦労とは

ワンマイルパートナーズはどのようなメンバーで立ち上げたのでしょうか。

ワンマイルパートナーズは、私と泉田、そして瓜田と他に金融機関出身の計4名で設立しました。

ナビゲータープラットフォームの設立から約5年間、大半の株式を私と泉田が保有し、自己資金での会社運営を行っていました。

ただ、ワンマイルパートナーズを設立する際には、デジタルとリアルとの融合を掲げており、これまでのメディア事業のような投資規模では対応できないと判断し、ベンチャーキャピタルや事業会社にも出資をしてもらいました。

具体的には、Coral Capital(コーラルキャピタル)、マネックスベンチャーズ、電通国際情報サービス(ISID)などを株主として迎えました。

出資者は、私たちの考えにポテンシャルを感じて出資に応じてくれました。

順風満帆の創業だったということでしょうか。

いやいや、そうではないです(笑)。

ワンマイルパートナーズを設立して、最初の想定外は、金融商品仲介業の登録に想定の二倍の時間がかかったことでしょうか。

ワンマイルパートナーズを設立したのは2018年11月27日なのですが、金融商品仲介業の登録を承認されたのは2019年11月29日です。

これを見てお分かりのように登録されるまでに1年もかかっています。その間、投資信託や債券の営業が一切できていなかったことになります。

瓜田を除く創業メンバーの3人は国内外の大手金融機関出身者でしたので、数ヵ月もすれば金融商品仲介業の登録は了承されると待っていましたが、結果としては1年もかかってしまいました。

ワンマイルパートナーズを創業して金融商品仲介業の登録がされるまでの1年間は何をしていたのでしょうか。

その1年も幸い保険は取り扱うことができたので、保険を中心とした資産運用の提案などを行っていました。

また、泉田はマネーセミナー用のコンテンツ作成に時間をかけていました。

これから資産形成を始めるお客様にどのように情報を届ければ伝わりやすいかを、最初は社内で社員向けにプレゼンテーションを繰り返し行い、修正をしていました。

社内での調整が終わると、知り合いに声をかけて実際にホテルの会場にお呼びして本番さながらのセミナーを実施しました。最初は役職員の友人・知人をお招きしました。貴重なご意見もいただけてその後の事業運営で助かった記憶があります。

泉田のすごいところは、リアルセミナーでお客様がわかってないな?というような顔をしたスライドや退屈そうにしていたスライドを次のセミナーの際には修正していたところですね。

セミナーに来られるお客様も真剣にメモを取られる方がほとんどだったので、そうしたお客様にどうしたら伝わりやすいか必死に考えていたのだと思います。それが現在のマネイロのオンラインマネーセミナーの原型となっています。

リアルのマネーセミナーの送客はパワーがありました。実際、セミナーに参加された方の7-8割の方が店舗での相談を予約されていましたね。お客様の反応が良い時は相談予約率が100%の時もありました。

ちなみに、現在のマネイロの相談の99%はオンラインで行われています。コロナ禍でお客様の相談のあり方がすっかり変わってしまったなぁという印象です。

今振り返ると2019年はどんな年だったのでしょうか。

うーん、丸の内本店の開店準備とともに金融商品仲介業の登録の申請のやり取りなどが忙しかったですね。

苦労の末に、11月27日に丸の内本店をオープンすることができましたが、オペレーションの整理やどうすれば効率的に営業ができるのかなどを考えながら年末を迎えた覚えがあります。

当然、その時は来年に自分たちのビジネスモデルを根底から覆すような出来事が起きるなんて夢にも思わなかったです。

では、次回は2020年以降の話を聞かせてください。

はい、承知しました。(次回の記事はこちら

参考資料

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