音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第35回の「金融分野共通#21 iDeCo制度を知ろう!③公的年金制度とiDeCo制度の違いって?併用はできる?【第35話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
年金制度には大きく分けて、「公的年金」と「私的年金」があります。それぞれ、どのような年金が該当するか分かりますか?
その通りです。公的年金と私的年金の違いは、公的年金が条件に応じて加入必須であるのに対し、私的年金は任意加入であるという点です。
公的年金は、国が運用している「国民年金」と「厚生年金」があります。
「国民年金」は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する年金で「基礎年金」ともいいます。
「厚生年金」は、法人の事業所を対象とする年金です。対象となる事業所に所属しているなど、一定の条件を満たした会社員や公務員などが自動的に加入しており、パートタイマーやアルバイトの方も、勤務状況によっては対象となります。
その通りです。国民年金が一階、厚生年金が二階部分です。私的年金がその上にきて三階にあたります。
給与明細の回でも解説しましたが「厚生年金保険」という項目で給与から天引きされているのが、この公的年金、つまり「国民年金」と「厚生年金」に関する社会保険料です。
つまり、このように社会保険料として支払っているので、国民年金に加入していれば基礎年金が、厚生年金にも加入していればさらに年金がもらえるという仕組みです。
私的年金にはいくつか種類があります。まず、企業が加入する確定給付企業年金(DB)や、企業型確定拠出年金(DC)があります。
公務員の場合は、企業型DCやDBではなく「年金払い退職給付」という制度の対象です。
また、個人が加入する「国民年金基金」、そして個人型確定拠出年金である「iDeCo制度」も私的年金です。ちなみに、「DC」とは「確定拠出年金」のことで、企業型確定拠出年金に加えて、iDeCo制度(個人型確定拠出年金)も該当します。
フリーランスや自営業の方が対象の「国民年金基金」は、任意で加入する私的年金で「二階部分」に該当します。自営業の方には「二階建て」部分にあたる制度がなかったため、この国民年金基金が作られたという経緯があります。
iDeCo制度は「確定拠出年金」なので、自分で掛け金を払い、自分で運用して資産を作ります。一方で、国民年金基金は「確定給付年金」です。個人ではなく「国民年金基金」という法人が運用します。
DBとDCは、企業型の年金なので個人では加入できず、制度を採用している企業の従業員だけが加入できます。
DBは「Defined Benefit Plan」、DCは「Defined Contribution Plan」の略ですが、語源で比べると分かりやすいかもしれません。DBは「Benefit」、つまり福利厚生のニュアンスがあります。会社が運用してくれる制度で、あらかじめ従業員と企業との間で条件などが決められています。
運用リスクは企業が負担してくれるので、万が一、支払い時にDBとして運用している総資産額が足りなくなれば、企業側が補填して、約束通り従業員に払うことになります。
企業型DCでは、企業が確定拠出年金として毎月一定額を「拠出金」として従業員へ拠出します。これは給与のように直接振り込まれるわけではなく、確定拠出年金の運用資金として提供されます。
最近は「選択制企業型DC」という制度もあります。これは従業員が自分の給与から一定額を拠出するかどうか選べる制度です。従業員目線で言うと、給与の一部を拠出金に回す分、手取りが減ります。一方で、税金や社会保険料の控除が受けられたりもします。自分の状況に応じて検討するのが良いでしょう。
iDeCo制度もDCなので、似たような仕組みだと考えてください。ただ、iDeCo制度は自分で運用管理機関を選べますが、企業型DCは企業が一括で指定の運用管理機関を選びます。その運用管理機関が取り扱っている金融商品を従業員がそれぞれ選んで、運用していきます。
iDeCo制度の毎月の拠出金に制限はあるものの、併用は可能です。ただし、いくつか注意点があります。
企業側が出してくれる拠出金に、従業員が任意で上乗せして運用できる場合があります。これを「マッチング拠出」といいます。
マッチング拠出を行っている場合、iDeCo制度は併用できません。つまり、「企業型DCでマッチング拠出を行う」か「iDeCo制度を利用する」かのどちらかを選択することになります。
現行制度では、企業型DCとDBなどを合わせて、月額5.5万円が上限です。
iDeCo制度の回でも触れましたが、「拠出時」「運用時」「給付時」の3つのタイミングで税制の優遇があります。これは企業型DCでも同じで、確定拠出年金制度に共通して適用されます。
ただし、企業型DCの場合、拠出金の扱いはiDeCo制度と少し異なります。企業が出す拠出金は、会社の法人税の「損金算入」に当てはまります。企業の収益から差し引けるので、企業の税制メリットになります。
マッチング拠出制度を使って、従業員個人が企業DCで上乗せ拠出した場合は、iDeCo制度と同じように全額所得控除の対象となります。
企業型DCと、iDeCo口座は別です。自分の会社が加入している企業型DCとiDeCoを同じ運用管理機関にしても、同じ口座にはまとめられません。
三階部分は、企業や自分がお金を出して運用します。一定の年齢になったら、老齢給付金として年金もしくは一時金、またはそのミックスで受け取れます。
確定給付年金(DB)は、企業ごとに定められた60歳以上70歳以下の年齢から受給できます。
確定拠出年金(DC)は、10年以上加入していれば、最短で60歳から受け取れます。この受給開始年齢は人によって異なります。
DBは企業が定めた金額、DCは自分の運用成果に基づく金額を受け取れます。
国民年金基金は、原則65歳から受取可能です。加入時の年齢やプランによって掛け金を決める制度なので、その条件に従った年金を受け取れます。
掛け金は、全額社会保険控除の対象となります。終身年金なので、生きている限り、自分で選んだプランの金額を受け取れます。
DBの場合は、終身もあれば、期限が決まっているケースもあります。
DCは、基本的に受け取り期間が5年以上20年以下の範囲で定められています。ですが、終身年金として受け取るための運用商品もあります。
一階の国民年金による年金は「老齢基礎年金」、二階の厚生年金による年金は「老齢厚生年金」と呼ばれます。これらを合わせて「老齢年金」といいます。
ちなみに、iDeCo制度や企業型DCで、年金と一時金の併用もしくはどちらか一方を選択して受け取るものは「老齢給付金」といいます。
老齢年金の一つである「老齢基礎年金」は、保険料納付済期間や保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取れます。
20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金の納付月数や、厚生年金の加入期間などに応じて年金額が計算されます。例えば、20歳から60歳になるまでの40年間の保険料をすべて納めると、満額の老齢基礎年金を受け取れます。
国民年金として納める保険料は全員定額なので、受給金額も一定となりますが、保険料の未納期間がある場合は減額されます。
厚生年金は、働いている期間と給与に応じて、納める金額が各々異なります。厚生年金保険から受け取る年金のため、働いている期間が長く高い給与をもらっていた人ほど、厚生年金の金額は高くなります。
はい。とはいえ、給与所得よりは小さめの差となります。これは「所得の再分配」といって、世帯構成や現役時代の所得の違いを軽減するように設計されているためです。
基礎年金も厚生年金も、原則として65歳から受給できますが、受け取り開始年齢の繰り上げ、繰り下げができます。60歳~65歳までの間に受け取ると減額受給となり、66歳~70歳だと増額受給となります。
はい、終身です。公的年金には障害年金や遺族年金もあり、保険的な意味合いも強いことが特徴です。また、インフレにも備えられる建て付けになっています。
そうですね。「公的年金だけでは老後資金が足りない」というところから、私的年金制度がスタートしました。ある程度、自分で老後資金を準備できるように金融リテラシーを高めておくことが大切です。