iDeCo制度を知ろう!①新NISAとの違いは?元本確保型って何?スイッチングとは【第33話】
金融分野共通#19

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はじめに
音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第33回の「金融分野共通#19 iDeCo制度を知ろう!①新NISAとの違いは?元本確保型って何?スイッチングとは【第33話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
iDeCoと新NISAはどう違う?
今日のテーマは「iDeCo制度」についてです。新NISA制度と合わせて話題になることが多いですが、iDeCoの方が歴史が古く「年金」のイメージがあります。
新NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」、iDeCoは「個人型確定拠出年金」といいます。
共通点として、どちらも「運用益が非課税」という特徴があります。
「新NISAとiDeCoはどちらが自分に合っているのか分からない」という方もいるかもしれません。目的や年齢によっても変わりますので、さっそく制度を比較してみましょう。
iDeCoは「老後のための年金制度」
投資まず、運用しているお金を引き出せるタイミングについて教えてください。
そこがこの2つの制度の大きな違いですね。iDeCoは非課税枠のある投資制度ですが「年金制度」でもあります。個人が投資によって年金の準備ができるように設計されているので、投資した資金や運用益は、原則として60歳まで引き出せません。
iDeCoは、「確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度」で、公的年金ではなく「私的年金」にあたります。つまりやってもやらなくてもよく、自分の判断で決められます。
公的年金は、「国民年金」と「厚生年金保険」ですよね。
はい。「国民年金」は、20歳以上のすべての人が加入する年金です。
「厚生年金保険」は、企業などに勤めている人が加入する年金です。勤務時間などの条件を満たせば、パートやアルバイトの方も自動的に加入することになります。
公的年金は条件を満たすと加入が必須ですが、iDeCoは私的年金なので、年金制度を使うかどうかは個人の自由です。
iDeCoは、具体的にどのように運用を進めていくのでしょうか。
iDeCoは、公式ページに記載されているように、自分で運用する年金制度です。
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。掛金は65歳になるまで拠出可能であり、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。
「掛け金を拠出する」とは、どういう意味なのでしょうか。
資産運用の観点で考えると「投資する」ということです。毎月、一定の金額を積み立てて自分の年金を準備する、要は「つみたて投資」です。
新NISAのつみたて投資枠のようなイメージですね。
その通りです。ただ、iDeCoと新NISAは、投資の細かい条件は異なり、対象となる金融商品も違います。ですが、仕組みとしては同じような方法で資産を作るのだと理解してください。
iDeCoで選べる商品は2タイプ
考え方としては、iDeCoも積立投資と同じでしょうか?「長期・積立・分散投資」が重要という点や、金融商品にはリスクがあるというお話を以前伺いました。
そうですね。iDeCoも金融商品を使っての積立投資なので、基本的な考え方は同じです。複利の効果を得られる点も共通しています。また、iDeCoも投資信託がメインの商品ですので、その点も同じです。
新NISAや投資信託で学んだ知識が活かせるということですね。
その通りです。ただ、運用商品において新NISAとiDeCoには、大きな違いがあります。
iDeCoの金融商品には、大きく分けると「元本確保型」と「価格変動型」があります。新NISAとの違いは分かりますか?
「元本確保型」があるという点でしょうか。新NISAには、元本確保型の商品はありませんよね。
その通りです。iDeCoの「元本確保型」の商品とは、具体的には「定期預金」や「保険」です。「価格変動型」は、投資信託ですね。新NISAの成長投資枠で購入できる上場株式(ETF)は含まれません。
「定期預金」は銀行でもできますが、iDeCoとは何が違うのでしょうか。
銀行で定期預金をした場合は税金の優遇制度がありません。iDeCoだと掛け金を所得控除の対象にできます。
iDeCoで定期預金をすると、節税しながら貯金できるのですね。
はい。ただ、運用に手数料がかかりますし、iDeCoの保険も同じですが「元本確保型」は、運用益が価格変動型よりも小さくなる傾向があります。その一方で、元本割れする可能性は低いというメリットがあります。
そのあたりを含めて、どれくらいメリットがあるかを考えながら運用すると良いでしょう。
以前出てきた金融商品の「安全性・流動性・収益性」の話と同じで、全てを満たせる金融商品はないのですね。
元本確保型は「安全性」が高めで、「収益性」が低くなります。
また、iDeCoの制度として、60歳になるまで引き出せないので「流動性」も低めです。これは、元本確保型に限らず、iDeCo制度そのものにあてはまる特徴です。流動性は新NISAの方が優れています。
金融資産の流動性とは、「現金への変えやすさ」でした。新NISAは、引き出すタイミングは自由です。もし、何らかの事情で「まとまったお金をいますぐ引き出したい」となった場合、新NISAで投資していれば現金に変えて引き出せるけれど、iDeCoではそれができないということですよね。
はい。人生の三大資金でいうと「住宅資金」や「教育資金」には、iDeCoは不向きです。ただ、冒頭でお話ししたように年金制度の一部なので「老後資金」の準備には適した制度として設計されていますね。
iDeCoの元本確保型の商品として出てきた「保険」は、普通に契約する医療保険や生命保険とはどう違うのでしょうか。
保険商品には、「資産運用ができる保険」と「そうではない保険」があります。iDeCoでは「年金の準備」を目的とした資産運用型の保険商品を選ぶことができます。
生命保険でいうと個人年金保険のようなイメージで、保障性よりも貯蓄性に重点が置かれた商品となっています。
「スイッチング」で柔軟な運用が可能に
新NISAとiDeCoで大きく異なる点として「スイッチング」があると聞きました。詳しく教えてください。
スイッチングとは「商品の付け替え」のことです。あまり運用益が出なくていために売りたい商品がある場合に、iDeCoなら売却してすぐに他の商品を購入できます。元本確保型の商品も含めて、iDeCoの運用枠の中でタイムリーに商品の入れ替えができます。
新NISAは、売却した分の投資枠を再利用できるのは翌年で、その年のうちには使えません。現在の新NISAが、時に機会損失になると言われるのはこのためで、スイッチング機能がないことが原因です。
今日は、iDeCoと新NISAの違いを資産運用の観点から学びました。iDeCoの詳細や年金制度との違いについては、次回詳しく話していきます。
第33話のまとめ
- iDeCoは新NISAと同じく投資制度だが「私的年金制度」の一部でもある
- iDeCoで運用した資産は、原則60歳まで引き出せない。住宅資金や教育資金には向かない
- iDeCoには、元本保証型の商品がある(定期預金と保険)
- 新NISAとiDeCoの違いは、スイッチング(商品の付け替え)の可否。iDeCoはスイッチングできるので、元本確保型の商品も含めてタイムリーに入れ替えられる
パーソナリティー:泉田良輔プロフィール

株式会社モニクル
取締役 グループ戦略担当
泉田 良輔 Ryosuke Izumida
慶応義塾大学卒業後、日本生命保険、フィデリティ投信で外国株式や日本株式のポートフォリオマネージャーや証券アナリストとして勤務。2013年3月、株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を共同設立し、取締役に就任(現在は代表取締役)。2018年11月、株式会社OneMile Partners(現:株式会社モニクルフィナンシャル)を共同設立し、取締役に就任。2021年10月、ナビゲータープラットフォームとOneMile Partnersの親会社として、株式会社モニクルを設立し、取締役に就任。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。東京科学大学大学院非常勤講師。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。著書に「銀行はこれからどうなるのか」「Google vs トヨタ」「機関投資家だけが知っている『予想』のいらない株式投資法」など。