音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第23回の「金融分野共通#15 アメリカとの金利差、資産形成にどう影響する?金利と為替は、コインの裏と表のような関係性【第23話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
前回に引き続き、「金融政策」の話をもう少し掘り下げてみます。特に、「金融緩和」と「金融引き締め」のところですね。
基本的にはそうです。ただ、大幅なインフレではない場合も、景気が過熱気味であれば金融を引き締めることはあります。銀行の役割を思い出してみましょう。
銀行は、企業や個人にお金を貸し出します。政策金利が上がると、銀行が企業に融資をする際の金利も上昇します。
そうなると、企業も設備投資に慎重になります。例えば、「設備投資をすると利益が5%上がる見込みがある」と考えても、高い金利水準では支払う利息が増えてしまいます。そもそも、事業が想定通りに伸びなければ利益が出ないかもしれません。
その結果、「設備投資は金利が下がってからにしよう」と、一旦見送ることになります。
そうやって、世の中全体が投資や大きな消費を控えるため、加熱していた景気が冷え、最終的に物価の上昇圧力が落ち着く、という仕組みです。必ずしも物価が下落するデフレになるまで引き締めるわけではなく、物価が安定してくれれば良い、という場合もあります。
逆に、デフレの時は、多くの人が預貯金ばかりして消費を抑えがちです。そうなると「経済が回らない」状態になるため、中央銀行は政策金利を下げるために国債を買い入れて、市場に出回るお金を増やそうとします。
政策金利が下がると、銀行はどういう動きをすると考えられますか?
そうです。そうなると、企業は安い金利で設備投資ができるので、事業を拡大しやすくなります。住宅ローンの金利が下がれば、家を買う人も増えるでしょう。
このように、日本銀行は国内市場を観察し、国際的な経済環境も総合的に見ながら景気を判断し、金融政策を行っています。
物価高という意味ではインフレですが、これは円安も大きく影響しています。実はインフレには、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があるんです。
「物価が上がり、それに伴って企業の売上もアップし、利益が増加して結果的に賃金も上がる」というのが良いインフレです。しかし現状は、物価上昇が先行し、それに引っ張られる形で賃金上昇への圧力が強まっている状況です。
先ほど、「景気が良いかよく分からない」というお話がありましたが、日本は「スタグフレーション」に陥っているのではないか、という議論もあります。
景気停滞を意味する「スタグネーション」と、物価上昇の「インフレーション」を組み合わせた造語です。「悪いインフレ」が続くと起こる現象で、物価だけが上昇し、景気は停滞している状況を指します。
そうですね。さまざまな経済の動きが、複雑に組み合わさっていると言えます。
アメリカの政策金利が上がり、日本の金利水準が変わらない場合は、「日本円の売りが進んで円安になる」というお話を以前にしました。
そうです。そのルールに、「アメリカの金利の動き」という要素の影響を加えて考えてみます。
アメリカの金利が上がれば、日本も国内金利を意識せざるを得ません。もちろん国内景気の影響も受けますが、世界の経済は相互に影響しあっています。アメリカの金利上昇は日本の長期金利にも上昇圧力をかけ、絶対とは言えませんが、連動して上がっていく傾向があります。
国内の金利が上昇すると、債券価格や株価が下がる傾向にある、というのは、あくまで日本の債券と日本株の話です。外国債券や外国株式の場合は、為替の変動という要素が加わります。
外国債券や外国株式といってもさまざまな通貨があり、ひとくくりにはできませんが、今回は米ドルで取り引きされている金融商品に話をしぼります。
米国株を保有している場合、アメリカの金利上昇を受けて円安傾向に市場が動くと、円建ての資産が増えます。
例えば、1ドル130円の時に買った100ドルの米国株があったとします。その後、1ドル150円の円安になったら、円に換算した価値は、1万3000円から1万5000円に増えますよね。
ただ、金利が上昇すると株価は理屈上は下落するので、株価そのものが100ドルより下がっている可能性もありますが、ここでは株価は100ドルのままとします。その前提で考えると「増える」ということです。
米国債も同じです。1ドル130円の時に1万3000円で買った額面100ドルの米国債は、1ドル150円の時に満期を迎えたらどうなりますか?
その通りです。このように、金利と為替の変動は、私たちの資産に直接影響を及ぼします。
金利と為替は、互いに影響し合うコインの裏表のような関係なんです。理屈はイメージできるでしょうか。
その通りです。より正確に言うと、日米の「金利差」が重要です。現状のようにアメリカの金利水準が高く、日本が低い場合は、金利差が大きいため円安になります。金利差が縮小すれば、円高になります。為替レートは常に二国間の「相対評価」だと考えてください。
アメリカの金利は、為替に直接影響します。ただ、為替は国際情勢などにも影響されるため、金利だけで動くわけではありません。
例えば、アメリカの景気が良く、FRB(連邦準備制度理事会)が景気を冷ますために利上げを行い、日米の金利差から円安ドル高という状況だとします。
そんな中、アメリカ経済が不況に陥る兆しが見えれば、市場は「FRBが景気を活性化させるために、近く利下げに転じるだろう」と予想します。その予想が広まった時点で、為替がまず変動します。日米の金利差が縮小すると考えられ、ドル売り円買いが進み、結果的に円高になります。
そうなると、日本株や日本の債券の価値は、アメリカの景気から少なからず影響を受けます。それに加えて、ドル建てで保有している金融資産は、価格自体の変動に加えて、円高による影響も受けてしまうんです。
話は少しそれますが、消費と資産の関係で「資産効果」というキーワードがあります。これは、保有資産の価値が上がると消費意欲が高まり、逆に価値が下がると消費意欲が減退するというものです。現在のように多くの人が外貨建て資産を持つ環境になると、円高で資産が目減りすることで、消費に影響が出てくる可能性も考えられますね。「しばらく買い物を控えようかな」という人が増えるかもしれませんね。
「ポートフォリオ」という言葉は知っていますよね?
債券を何割、株式を何割持つか、という資産の組み合わせのことですね。変動要因が多いからこそ、資産を一つに集中させず、分散させることが大切になってきます。
為替や金利が変わった時に、何を売って何を買うか、幅広い選択肢を持つことをおすすめします。為替の変動をイメージすれば、「全ての資産が日本円」「全ての資産が米ドル」というのも、リスクであることが分かるかと思います。
積立投資の重要性も同じです。時間の分散によって、為替変動などの影響をならすことができます。長期投資も、短期的な価格変動の影響を和らげる効果が期待できます。
どの商品を売るべきか、買うべきか。この辺は、こうした知識に慣れてくると、為替の様子や金利の変動を見ながら、わかってくるでしょう。そうなると、もっと主体的に資産運用に取り組めるようになりますので、念頭に置いておくといいですよ。