音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第22回の「金融分野共通#14 アメリカの金融政策が、日本の景気に及ぼす影響は?インフレ、デフレの指標は、物価の変動率2% 【第22話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
金融商品の値動きは、単一の要因で決まるほど単純ではありません。
だからこそ、日々発表されるマクロ経済指標は、状況を判断する上で重要なヒントになります。経済指標は互いに影響し合っており、中でも特に重要なのがアメリカの金利動向です。
この言葉は、アメリカ経済のわずかな変化が、日本経済に大きな影響を及ぼす可能性があることをあらわしています。そして、日本経済に影響があるということは、皆さんの資産形成にも深く関わってきます。
実は、アメリカの中央銀行の仕組みは、日本銀行と比較すると少々複雑です。
日本銀行に相当するのが「連邦準備制度」(FRS:Federal Reserve System)です。これは連邦政府の機関にあたります。
「連邦準備制度(FRS)」が設立された当初は「連邦準備理事会(Federal Reserve Board)」という名称だったため、理事会はその略称である「FRB」と呼ばれることが多いです。
ただ、現在は1935年の銀行法によって正式名称が「連邦準備制度理事会(the Board of Governors of the Federal Reserve System)」に変更されていますので、「FRB」という呼称は歴史的な経緯で使われています。
そして、連邦準備制度(FRS)はワシントンに置かれた理事会と、国内12の地区にある「連邦準備銀行」から構成されています。
少しややこしいのですが、「連邦準備銀行(Federal Reserve Banks)」の略称も「FRB」となります。ただ先ほどお話しした通り、「FRB」というと一般的には理事会を指します。
はい、その通りです。
金融政策については、FRSの構成要素である「連邦公開市場委員会」(FOMC:Federal Open Market Committee)で決定されます。
FOMCは、「FRBの理事」と「各地区の連邦準備銀行の総裁」で構成されています。
FOMCは、政策金利である「フェデラル・ファンド(FF)レート」の誘導目標水準などを決定し、金融政策の舵取りを行っています。 この会合は年に8回、通常は2日間にわたって開催されます。
まず、「為替レートへの影響」が考えられます。アメリカの金利が上昇すると、その時々で影響の度合いは異なりますが、世界的に金利上昇の圧力とみなされることが多いです。
アメリカは、コロナ禍におけるインフレを抑制するために、ここ数年は利上げを継続してきました。一方で、日本は長らく金利を上げない政策を続けてきたため、日米の金利差が拡大し、円安が進行しました。
その通りです。さらに、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻といったさまざまな外的要因が重なり、世界的に物価が高騰し、日本国内の経済状況もインフレ傾向となりました。そうした状況を受けて、日本銀行も利上げの方向に舵を切り始めているというわけです。
ご存知の通り、日本経済は多くを輸入に頼っています。分かりやすい例でいうと、石油などのエネルギー資源は、ほぼ海外から輸入していますよね。
そうなると、為替レートの変動に強い影響を受けます。円安になると、円建ての輸入価格は上昇します。また、製造業などでも資材などを調達する際に、企業は円をドルなどの外貨に交換する必要があるため、大量の円が売られ、大量のドルが買われるという現象が起きます。
その通りで、FRBは雇用統計なども考慮して、金利を決定しています。 雇用統計の数値は、「次にアメリカの金利がどう動くか?」という市場を予測する材料の一つになるため、重要な指標です。
日銀の金融政策では、基本的に国内、つまり内的な要因を調整することで物価をコントロールしようとします。ですが、現在の日本のように、国外の要因の影響でインフレ傾向になるということも起こり得ます。
一般的に、だいたい「2%」という物価上昇率が目安とされています。これは日本銀行だけでなく、アメリカのFRBも同様に参考にしている水準です。
必ずしも毎回その通りというわけではないですが、一般的にはそうです。「2%」という数字を頭に入れておくと、ニュースなどを見て状況を判断しやすくなると思いますよ。
金利の調整方法は、主に2つあります。1つは「公開市場操作(オペレーション)」、もう1つは「準備預金率操作」です。
「公開市場操作」とは、「中央銀行が市場に出回るお金の量を調整すること」です。日本を例にすると、日本銀行が民間の銀行との間で国債などの売買を行うことです。
市場にお金が余っている時には、民間の銀行へ、日本銀行が保有している国債を売却します。逆に、市場にお金が不足している時には、民間銀行が保有している国債を日本銀行が買い取ります。
はい。「市場全体の資金の増減を調整し、経済活動をコントロールする」という考え方です。日本銀行が国債を売ると、市場に出回るお金の量が減少して、結果として金利が上昇します。これを「金融引き締め」といいます。 日本銀行が国債を買い取ると、市場に出回るお金の量が増加して、結果として金利が低下します。これは「金融緩和」と呼ばれます。
民間の銀行が受け入れている預金に対して、一定の比率(準備率)の金額を日本銀行に預けることが義務付けられています。この「預金に対して、何%を日銀に預けなければいけないか」という準備率を上下させることで、民間銀行が市場で動かせる資金量をコントロールします。
準備率が上がると、市場に出回るお金の量が減ります。そうするとどうなるでしょうか。
その通りです。逆に、準備率が下がると、市場のお金の量が増えるので、金利が下がり「金融緩和」となります。ただ、この準備率のコントロールは、近年ではあまり行われていません。「公開市場操作」や「政策金利」で短期金利を調整する方が、より実体経済に合っていると考えられているからです。
日本が長らくデフレに苦しんでいた頃は、日本銀行も積極的に金融緩和を行っていました。それでもデフレから脱却できなかったため、TOPIXに連動するETF(上場投資信託)を直接購入するなど、これまでにない金融政策を実施したこともあります。 こうした非伝統的な金融緩和は、アメリカでもリーマンショックの後にFRBが実施しました。
このように、市場の資金量を増減させながら、伝統的な金融政策や、セントラルバンカーが知恵を絞って考え出した新たな金融政策が展開されてきました。ですが、それでもインフレへの転換は難しく、結局のところは先ほどお話ししたように、コロナ禍や戦争といった日本国外の要因によって、ようやく日本もインフレ傾向になった、というのが近年の状況です。
今後も、日本の景気は、アメリカの金利動向をはじめとする国際情勢に大きく影響を受けると考えられます。為替レートの動きも必ず絡んでくるからです。そうした状況を踏まえて、日本銀行がどのような金融政策を選択していくのか。そこが注目すべきポイントになるかと思います。