音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第20回の「金融分野共通#12 金利って何?中央銀行が決める政策金利とは?中央銀行の役割も知っておこう【第20話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
中央銀行は、一般的に、国内外の経済状況を見て、景気が悪化したと判断すれば金利を下げて景気の回復を図ります。逆に、景気が過熱気味でインフレ傾向になると、金利を上げて、過熱した景気を冷まそうとします。
日本の中央銀行である「日本銀行」もこの役割を担っています。例えば、2024年の夏に金利の引き上げを決定したことで株式市場が暴落し、話題となりました。
そうですね。金利は、私たちの生活や経済活動などのとても身近なところに関わっています。
金利は歴史をさかのぼるとかなり古くから存在していたと言われています。資産やモノの貸し借りがあるところには金利があり、貿易が盛んになったり産業が発展したりする背景には、常に金利が関わってきました。
金利にはいくつか種類がありますが、具体的には、何を思いつきますか?
お金を貸した側が受け取るのが「利子」、借りた側が支払うのが「利息」ですね。「金利」は、通常は1年単位(年利)で表されます。
ローンや奨学金を借りた場合には、「借りたお金に対して、どれくらい上乗せして返済するか」という見方になるでしょう。ローンも奨学金も借りたのであれば、利息という概念が発生しますね。
お金の「借り手」と「貸し手」という立場の違いはあっても、仕組みは同じです。
そうですね。では、金融商品として債券や預貯金を保有している場合は、誰が貸し手になると思いますか?
国債、社債についてはその通りです。預貯金は、普段あまり意識されることはないかもしれませんが、預貯金をしているみなさんが貸し手で、借り手は銀行です。
その通りです。銀行口座を開設し、預金をすると、みなさんは「銀行に、預金という形でお金を貸している」わけです。
銀行は、みなさんから預かった預貯金を、企業や個人に貸し出します。住宅ローンもそうですし、企業が事業を始めるための資金や、設備投資のための資金を融資したりもします。その際の金利は、法律で定められた範囲内で、銀行が自由に設定することができます。
企業は、その資金で事業を大きくして、そこから生まれた利益で、従業員の給与を支払ったり、銀行に借入金を返済したり、また、新しいサービスを生み出したりするために投資をします。
その通りです。この政策金利は、経済全体の方向性を決める上で、とても重要な役割を果たします。
ただ、この「政策金利」という言葉が具体的に何を指すかは、時代とともに変わってきました。日本が「ゼロ金利政策」や「マイナス金利政策」という、これまでにあまり例のない状況を経験する中で、金融政策も伝統的な手法からより踏み込んだものまで多様化していきました。
その変遷の概要を、かいつまんでお話しします。
もともと政策金利とは、「公定歩合」と呼ばれる、日本銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際の金利を指していました。
金利の自由化が進んだ1990年代半ば以降は、短期金融市場(金融機関同士が短期資金を融通しあう市場)における「無担保コールレート(オーバーナイト物)」が、政策金利とみなされていました。
その後、さまざまな変更があり、2016年には「日銀当座預金の一部に適用される金利」が政策金利となります。
そして、2024年3月からは、政策金利は再び「無担保コールレート」になりました。
つまり、現在の「政策金利」は、こうした過去の様々な変化を経て定まってきた、ということです。
政策金利の歴史は、日本の資本市場や金融政策の歴史でもあり、大変興味深い分野です。
ほぼ、金融政策の目的を達成するために、日本銀行が設定する短期金利(期間が1年未満の金利)という意味で使われています。
以前、日本銀行の役割と、政策金利を上げ下げする理由についてお話しましたね。
その通りです。ちなみに、ポンドを通貨とするイギリスではイングランド銀行、EUのユーロ通貨圏では欧州中央銀行(ECB)が金融政策を決めていて、ドイツやフランスといった国々の中央銀行と連携しながら政策を進めています。
政策金利についてお話ししてきましたが、中央銀行がどのような役割を担っているのかを把握しておきましょう。ほとんどの国で似たような機能を持っていますが、ここでは日本銀行を例にお話しします。
日本銀行には、大きく分けて3つの重要な役割があります。それは「日本銀行券(紙幣)の発券」「『民間の銀行』の銀行としての役割」「政府の銀行」です。
一つ目は、紙幣(日本銀行券)を発行することです。どれくらいの量の紙幣を発行するかは、毎年、日本銀行と財務省が協議して決めます。
ちなみに、紙幣と硬貨は製造場所が違い、紙幣は国立印刷局、硬貨は造幣局で製造されます。完成した紙幣と硬貨はいずれも日本銀行に納品されます。この流れは、次に説明する「銀行の銀行」としての役割とも関連しています。
皆さんが普段使っている都市銀行や地方銀行、信用金庫といった民間の銀行は、すべて日本銀行に口座を持っています。
造幣局と国立印刷局で作られた硬貨と紙幣は、日本銀行内にある各民間銀行の口座を通じて世の中に供給されていきます。2024年7月に新しいデザインのお札が発行されましたが、それらも同様のルートで私たちの手元に届けられています。
私たち個人や一般の会社は、日本銀行に口座を作ることができません。口座を開設できるのは、銀行などの金融機関や、日本国政府、それから外国の中央銀行や国際機関などに限られています。また、日本銀行の預金は「当座預金」という種類に限られていて、普通預金や定期預金はありません。
一般の銀行にも当座預金口座はありますが、個人の方には馴染みがないかもしれませんね。主に企業が、小切手や手形による支払いのために利用する決済用の口座です。当座預金は、原則として利息が付かない代わりに、自由にお金を出し入れできて、決済に特化しているのが大きな特徴です。日本銀行にある民間銀行の当座預金は、「日銀当座預金」と呼ばれます。
民間銀行は、日本銀行に「当座預金口座」を持っていて、法律で決められた一定の割合の金額(法定準備預金額)を預ける義務があります。この仕組みを「準備預金制度」と言います。預け入れる金額は、それぞれの銀行が持っている預金の総額などで決まります。
準備預金制度の目的の一つは、金融機関同士のお金のやり取り、つまり資金決済を円滑かつ安全に行うためです。例えば、A銀行の口座からB銀行の口座へ資金を振り込みたい場合、ATMやインターネットバンキングで手続きをしますよね。
その時に、日本銀行にあるA銀行の日銀当座預金口座から、B銀行の日銀当座預金口座へ資金が移動しています。こうした銀行間の大量のお金のやり取りは、「日本銀行金融ネットワークシステム(通称:日銀ネット)」という専用のシステムを通じて行われています。
多くの銀行がこのシステムで膨大な量の取引を行っていますが、日本銀行がこれらの口座を一元的に管理しています。
その時皆さんが納める所得税や消費税、また給与から天引きされる社会保険料などは、日本銀行に預け入れられます。
国の資金は「国庫金(こっこきん)」と呼ばれ、これを「政府預金」という形で預かって管理しているのが日本銀行です。つまり、日本銀行の中に政府専用の預金口座があるんです。
年金の支払いも、日本銀行を通じて行われます。日本銀行内の政府の預金口座から、それぞれの民間銀行の日銀当座預金口座に資金が移り、そこから皆さんの銀行口座へ年金が振り込まれる、という流れになっています。