音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第19回の「金融分野共通#11 投資の基本的な考え方を知る!3つの投資方法「長期投資」「積立投資」「分散投資」って?【第19話】」でお話しした内容を記事としてお届けします。
資産形成や資産運用をしていく上で大切なのは、「どのような考え方で投資をするか」という“型”を知っておくことです。これまでいろいろな角度から金融商品を見てきましたが、その知識を踏まえて「どう使いこなしていくか」という観点からお話していこうと思います。
これから資産形成を始めたいという初心者の方に、ぜひ知っておいていただきたい基本的な投資の考え方が3つあります。「長期投資」「積立投資」「分散投資」です。
「長期投資」とは、文字通り長い期間にわたって資産を運用する方法です。金融の世界では1年以上の運用を「長期」と呼びます。ちなみに、1年未満が短期です。ここでは、5年、10年、20年といった、より長いスパンをイメージしてください。
長期投資のメリットは、運用期間が長くなるほど資産の収益が安定してくる点にあります。価格のブレが、資産が本来持っている価値の範囲内に収まっていくようなイメージです。
その通りです。長期投資は、時間を味方につけて資産を増やしていくスタンスといえます。
特に、「複利」の効果が大きく働いてきます。例えば、運用で利益が出た年は、その利益も翌年から元本に組み込まれて一緒に運用されます。こうして利益がさらに利益を生み、雪だるま式に資産が増えていくのが複利の力です。
もちろん、長く運用すれば必ず増えるというわけではありません。10年、20年といった長い期間の中では、市場の暴落が起きて元本割れするリスクも存在します。だからこそ、すべてを株式に投資するのではなく、債券や現金などを組み合わせて運用することも大切になります。これは、後で話す分散投資の話でもあります。
はい、iDeCoはまさに長期投資に当てはまりますね。途中で引き出すことができないという制約がある分、日々の値動きに一喜一憂せずに運用を続けられるのが特徴です。資産のバランスを調整しながら、老後資金をじっくりと準備していくようなイメージです。
NISAのつみたて投資枠も、長期投資と相性が良いといえます。iDeCoと違い、必要なときに引き出すことができるため、将来に備えながらも、いざというときに資金を動かせる柔軟性があります。
「短期投資」は、どちらかというと“応用編”という位置づけです。短期的な値動きを見ながら頻繁に売買を繰り返すスタイルで、運用の成果を出すには、ある程度まとまった資金や専門知識が必要になります。
デイトレードのように、短期的な材料で売買する投資手法は、根拠がしっかりしていれば「投資」ですが、そうでない場合には「投機」と呼ばれることもあります。
はい、その通りです。積立投資では「ドルコスト平均法」という考え方が基本となります。毎月決まった金額で金融商品を購入し続けることで、価格が高いときには購入量が少なくなり、逆に価格が安いときには購入量が多くなるという手法です。
例えば「毎月1万円ずつ資産形成にあてよう」と決めた場合、金融商品の価格が変動しても、毎月1万円の範囲で投資信託などをコツコツと買い付けていく、といったイメージです。
積立投資の場合、一括で購入するのに比べて購入時期が分散されるため、短期的な値動きによるリスクを抑える効果が期待できます。これも、時間を味方につけた投資方法の一つといえますね。
では、基準価額(きじゅんかがく)(※)が1万円の投資信託があるとしましょう。
(※基準価額・・・投資信託1万口(くち)あたりの価格。新聞やネットに出ている投資信託の価格は、この基準価額のことを指す。基準価額が1万円の場合、1口は1円。)
運用を始めるにあたって、一括で投資信託を100万円分購入するAさんと、毎月1万円ずつ積み立てていくBさんの2人がいたとします。購入直後、Aさんは100万円相当の資産を、Bさんは1万円相当の資産を保有している状態です。
1ヵ月後、この投資信託の基準価額が2万円に上がったとします。Aさんの資産は200万円になりますね。では、毎月積み立てているBさんはどうなるでしょうか?
その通りです。ではさらに、次の1ヵ月(3ヵ月目)に基準価額が5000円に下がったら、どうなるでしょうか。
そうなんです。積み立て投資だと、価格が下がったときにも多くの口数を購入できるため、値動きが激しい市場環境でもダメージが小さくなる傾向があります。
はい。株価や為替相場などは日々変動していますが、積立投資のように少しずつ買っていくと、価格が下がったときに多くの口数を保有できるため、あとで価格が戻ったときにリターンを得やすくなります。
たとえば、翌月にまた基準価額1万円に戻ったとしましょう。Aさんは100万円に戻るだけですが、Bさんは3万5000口あるので、3万5000円になっています。3万円の投資に対して5000円の含み益があるということになります。
長期投資をし続けて、将来資産価格が上がるものに投資をしている場合においては、その通りです。
高い時には少ししか増やせませんが、安い時に買いためる。そうすると、基準価額が上がったときに、その分資産額がアップします。株式などの、値動きが激しい資産が含まれている投資信託と相性の良い投資方法ですね。
分散投資とは、投資する対象をいくつかの軸で分散させる手法です。分散の軸としては、「資産」の種類(株式、債券など)や、「国」や「地域」などがあります。
先ほどお話しした「積立投資」は「時間」の分散といえます。
そうですね。資産形成や投資について調べたことのある方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
「一つのカゴに全部の卵を入れたら、もしそのカゴを落としてしまったときに、卵が全部割れてダメになってしまう。一方で、カゴを複数に分けて卵を入れておけば、カゴを一つ落としてしまっても、他のカゴの卵は無事である可能性が高い」という比喩です。
はい、その通りです。株式のみに投資する場合だと、A社とB社のように複数の企業に分けて投資することですね。このように投資先を細分化・分散させておくことで、リスクを抑えつつリターンを最大化できる組み合わせを目指すことができます。
通貨も関連しますが、それ以上に「どこの国の株式に投資するか」という点が重要です。
例えば、外国株式を持つ場合に「米国株だけに集中するのではなく、ユーロ圏の株も買っておこう」といった考え方ですね。特定の投資先に偏ると、その国の政治的な変動や、自然災害、経済危機などに影響を受けてしまいかねません。いわゆるカントリーリスクを分散する目的があります。
その通りです。特に「大きなリスクを取りたくない」「堅実に資産を増やしていきたい」という方は、これら3つの考え方を知っておくと良いと思います。
実は、この3つの投資方法は、「投資信託」をうまく活用することで、すべて満たせる場合があります。投資信託は、それ自体が複数の株式や債券などの組み合わせで構成されている商品が多く、商品の性質そのものが分散投資の考え方に基づいているからです。
特にNISAの「つみたて投資枠」で投資できるのは、金融庁が定めた基準を満たした特定の投資信託に限られています。少額から始めやすく、これらの基本的な投資原則に沿ったものが多いのが特徴です。
NISAの「成長投資枠」はまた少し性格が異なりますが、「つみたて投資枠」についていえば、一時的な相場の暴落だけで運用を完全にやめてしまうのは、もったいないのではないでしょうか。
長期で運用を続けていくことを前提とするなら、市場では当然、価格が大きく下がる局面も起こり得ます。そうした際に投資を辞めてしまう方がいる一方で、今回紹介した投資の原則を知っていると、逆に価格が安くなった機会に多く買い付けられるチャンスだと捉えて、積み立て額を増やしたり、淡々と継続したりといった判断もできるようになります。
「複利」の効果もそうですが、「長期投資」「積立投資」「分散投資」は、どれも「時間」を味方につける考え方です。相場の短期的な変動に惑わされず、長期的な視点での判断が重要になります。