音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第16回の「金融商品をリスクとリターンでマッピング!「預貯金」「債券」「株式」「投資信託」それぞれのリスクとリターンの傾向は?」でお話しした内容を記事としてお届けします。
はい。間接的な影響も含めるとその通りです。これから代表的な金融商品をいくつか取り上げますが、ロー・ミドル・ハイの基準でマッピングしていこうと思います。
預貯金は「ローリスク(ほぼノーリスク)、ローリターン」という特徴があります。「預貯金はほぼノーリターンでは?」と思うかもしれませんが、実は日本でも、かつては金利が8%と高い時代がありました。現在は、ほぼゼロ金利に近い状況です。
それも一因かもしれません。昔から、高いリターンを望んで投資をしていた人はもちろんいましたが、老後資金の準備が必要ではなかったため、積極的に資産形成に取り組まなくても生活できた時代がありました。
たとえば、70代くらいのちょうど私の親の世代はすでに引退していますが、その世代が子育てしていた当時は金利も高く、定期預金でお金を預けるだけで増えましたし、さらに公的年金も充実していたため、資産運用を意識する必要がなかったのです。
日本では高齢者が資産の多くを預貯金で保有していますが、その背景には、預貯金のようなリスクの少ない運用方法が浸透していたことも影響していると思います。
そうですね。昨年、日銀がマイナス金利政策を採っていたときの金利は、普通預金の平均が0.001%程度でした。いまは少し上がり、最近では0.2%程度になりました(2025年5月確認)。
金利の変動は、預金の利子も所得として約20%課税されるため、実際に受け取る金額は約1600円になります。
もし、日銀が金利を引き上げ、銀行も金利をアップすると、資産形成のために定期預金を選ぶ人が増える可能性はあります。利息がつく普通預金や定期預金は基本的にローリスクですし、万が一、銀行が倒産した場合でも、預金者一人当たり1000万円までは保証されます(預金保険制度)。
ただし、外貨預金は預金保険の対象外となります。外貨預金は為替変動リスクやカントリーリスクなどの影響を受けるため、ミドルリスクに分類されます。
債券も金利に関連する金融商品です。債券とは、国や地方自治体、企業が資金を調達するために発行する証書で、いわゆる「有価証券」のひとつです。
国が発行するのが「国債」、地方自治体が発行するのが「地方債」、企業が発行するのが「社債」です。
債券にはいくつか種類がありますが、ここでは利払いがある債券を例に説明します。
債券は通常、額面が決まっており、債券ごとに利率(金利)や償還期日、利払いのタイミングが決められています。
例えば、額面100万円の債券で利率が2%、償還日まで10年間が設定されている場合、年に1回の利払いだとすると、2万円の利払いが10年間にわたって行われます。
はい。債券価格は金利が上昇すると下落し、金利が低下すると上昇します。これは債券価格を計算する際に、将来の利息や元本の支払いを現在の価値に割り引く際に金利が使われるからです。金利が上がると割引率が上昇し、債券価格は下がります。逆に金利が下がると割引率が低下し、債券価格は上がります。
その通りです。債券は「借用書」のようなものですね。預貯金と比べるとリスクもリターンも高めですが、一般的にはローリスク・ローリターンからミドルリスク・ミドルリターンに分類されます。
例えば、日本国債はローリスク・ローリターンですが、格付けの低い債券はミドルリスクになります。また、海外の国債や社債は、為替変動リスク・信用リスク・カントリーリスクなどが関連してきます。
株式にはさまざまなリスクがありますが、最も大きいのは「株価変動リスク」です。まずは、株価が動く仕組みについて説明します。
株価は、超短期的には「需要と供給のバランス」によって決まります。買いたい投資家が多ければ株価は上がり、売りたい投資家が多ければ下がります。
では、なぜ株価が変動するのかというと、投資家が将来の利益をどのように見込むかによって変わるからです。将来、予想より多くの利益が出ると考える投資家が増えれば、株を買う人が増えて株価は上昇します。一方で、期待よりも利益が出ないと考える投資家が増えると、株を売る人が増え、株価は下落します。
つまり、長期的には「企業の利益をどう見るか」が重要なポイントとなります。
たとえば、A社が業績の見通しを大きく下方修正した場合、投資家は将来の利益が減ると考え、一斉に株を売るため、株価は急落します。逆に、A社の決算が黒字になったり、新たな特許が認められ、将来の収益増加が見込まれると、株価は上昇します。
また、為替レートの影響もあります。たとえば、自動車メーカーのような輸出企業は円安時に買われる傾向があり、逆に円高になると輸入企業や小売業の株が注目されることが多いです。
株価は「将来の利益の見通し」によって決まるためです。具体的には、「将来得られる利益(正確にはキャッシュフロー)が、現在の価値でどの程度なのか」を計算することで株価が決まります。
キャッシュフローとは、企業のお金の流れを示すもので、キャッシュフローとしての収入と支出を計算して「フリーキャッシュフロー(純現金収支)」を求めることができます。
ただし、キャッシュフローの大部分は税引後の利益であるため、シンプルに「利益」として説明することが多いです。また、現在の価値を算出する際の基準となる「金利」も株価に大きく影響するため、金利の動向は重要な指標となります。
利益に影響を与える要素(為替レート、新技術、特許など)も、株価に大きなインパクトを与えるのです。
これは「割引現在価値」と呼ばれる概念です。簡単にいうと、「将来得られる利益を、現在の価値に換算したもの」です。
たとえば、「3年後に100万円の価値があるものは、現在の価値でいくらなのか?」という計算を行い、価値を見積もることを指します。
この概念は、株式投資、M&A、不動産投資などで広く活用されます。詳細な計算には金利の考慮が必要ですが、まずは仕組みを理解することが大切です。
また、リスクが大きくなるほど、割引現在価値は低くなります。なぜなら、「将来の利益を現在の価値に換算する際に、大きく割り引かれる」ためです。
そうですね。株価には、企業単独の業績だけでなく、国の政策や国際情勢など、さまざまな要因が影響します。こうした変動要因が多いため、株式は「ハイリスク・ハイリターン」と評価されるのです。ただし、外国株式と日本株式ではリスクとリターンの傾向に違いがあります。
一般的に、日本株は外国株に比べてリターンが低い傾向にあります。これは、日本企業の投資家資本に対する利益率や利益成長率が海外企業と比べて低めであるためです。一方、外国株式には為替変動リスクやカントリーリスク(国の政治・経済リスク)などが伴います。
その通りです。投資信託の中には、リスクが高めのもの、リターンが低めのものなどがあり、金融資産の内訳によってリスクは大きく異なります。
株式だけでなく、債券も価格が変動するため、その割合によってリスクとリターンが決まります。たとえば、値動きの大きい株式中心の投資信託もあれば、比較的安定した債券中心のものもあります。
ただし、債券も発行元が破綻すれば価値がなくなってしまうため、一概にローリスクとは言えません。金融商品には、すべてリスクがあることを理解することが重要です。
金融商品におけるリスク比較は、「リスクがある前提で、その中で相対的にハイリスクかローリスクか」を見極めるものです。
そうですね。金融商品ごとにリスクやリターンの特性は異なり、「絶対に安全な金融商品」は存在しません。
実は、将来の経済環境がどう変わるか分からない以上、今日お伝えしたリスク傾向も常に正しいとは限らないんです。
リスクを避けるために預貯金だけを選ぶ人もいますが、物価上昇に金利が追いつかない場合、預金の価値が目減りしてしまうリスクもあります。資産運用を考える際は、そうした側面も意識することが大切です。
ちなみに、投資信託の運用を担当するファンドマネージャーやポートフォリオマネージャーは「リスク管理のプロ」だと言えます。高いリターンを目指すためには、精度の高いリスク管理が欠かせません。金融のプロでさえも、リスク管理を怠らないということを、ぜひ念頭に置いておいてくださいね。