音声メディア『モニクルラジオ』がお届けする金融教育ポッドキャスト「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」は、「これだけおさえておけば、お金で大ケガをしない!」をコンセプトに、全50回のプログラムを配信しています。この番組では、学校の金融教育カリキュラムを作る際にも使用されている「金融リテラシー・マップ」にまとめられている項目を踏まえながら、金融知識をひとつずつ学んでいきます。
今回は、第15回の「資産運用で大切なのは金利!「価格変動リスク」「金利変動リスク」「為替変動リスク」など金融商品のリスクを知っておこう」でお話しした内容を記事としてお届けします。
「リスク」という言葉は前にも出てきましたが、覚えていますか?
その通りです。ブレ幅が大きいものを「リスクが大きい」、ブレ幅が小さいものを「リスクが小さい」といいます。今回は、金融商品に関するリスクについてお話しします。
「リスク」と対になる言葉としてはで、「リターン」があります。「リターン」とは、資産形成や・資産運用の中で得られる収益のことを指し、プラスになることもあればマイナスになることもあります。
その通りです。「リスク」と「リターン」は一般的に「ハイ」「ミドル」「ロー」の3段階で分類されることが多く、基本的に「リスク」と「リターン」は比例します。
もしそうでなければ、大きなリスクを取る意味がなくなってしまいますよね。一般的には言葉もセットになり、「ハイリスク・ハイリターン」というような表現が使われます。
ただし、資産運用をする中では「ハイリスク・ローリターン」になるケースもあります。
株式投資をしても全く利益が出ないという状況です。2012年に始まったアベノミクス以前の日本株は、そのような状況が続いていました。
例えば、日本株を代表するTOPIXのインデックスファンドに投資しても、全くリターンが得られない。株式に投資する投資信託を購入しているのに利益が出ないということが起こっていました。
一方で、同じ時期の米国株式は堅調に上昇していました。「同じ株式なのに、なぜこんなに違うのか」と疑問に思った投資家も多かったのではないでしょうか。
「価格変動リスク」は、金融商品の価格が上下するリスクのことです。前述のとおり、値動きそのものがリスクであり、その価格が変動することがリスクにつながります。
金利とは、お金を貸した際に受け取る利子や、お金を借りた際に支払う利息のもととなる「将来のお金の交換レート」です。日本では長い間「ゼロ金利」と呼ばれる、金利がない異常事態が続いている状態でした。
実は、資産運用の中で一番大事なのは金利なんです。
金利の変動は、資産価格に大きな影響を与えるからです。一般的に、金利が上がると株式や債券の価格は下がります。金利が下がると、株式や債券の価格が上がります。
この関係についての詳細は別の機会に説明しますが、今日は「金利と資産価格は密接に関係している」という点を押さえておいてください。
ちなみに、この理屈は株式や債券に限らず、不動産にも当てはまります。そのため、金利の変動はリスクとなり、価格変動にも影響を与えます。言い換えれば、金利変動リスクは、価格変動リスクの一部ともいえるでしょう。
為替とは、現金を使わずに手形や小切手を用いて行うお金のやり取りのことを指します。外国の通貨と交換をすることを「外国為替」といいますが、ここでいう「為替変動リスク」とは、外国為替に関するリスクです。「為替レート」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
その通りです。外国為替とは、日本円と外貨の交換レートに基づいて、お金を取引することです。例えば、ドルを買う動きが進むと、円はドルに対して安くなります。実は、この為替レートの変動にも、金利が大きく関わっています。
最近では、日本より米国の方が金利が高い状態が続いているため、「円よりもドルを持ちたい」と考える人が増え、円安・ドル高が進んでいます。
このように、為替レートは日々変動しているので、外貨建て資産を保有している場合、円換算の価値も変わります。これが「為替変動リスク」です。こうして見ると、為替変動リスクも価格変動リスクの一部ということがお分かりいただけると思います。
「信用リスク」とは、金融機関が負うリスクの一つです。金融とは「お金の融通」という意味だというのは以前にお話ししましたが(第11回)、融通する先、つまり取引先の契約不履行などによって、決められた期日までに債権が回収できないリスクです。
与信先の倒産や経営悪化などで資金の回収ができないことを「契約不履行(デフォルトリスク)」と呼びます。
全体で見ると、そこまで高い確率で起きるわけではありません。そのため、価格変動リスクと比べると、普段はあまり意識しないことが多いです。
市場全体で信用リスクが強く意識されるのは、リーマンショックのような金融危機のときです。当時は大手の投資銀行(日本では証券会社)が破綻したことで、一気に金融機関に対する懐疑的な見方が広がりました。信用リスクが高まると、資産価格に大きな影響を与えることになります。
「カントリーリスク」とは、一国の政治や経済情勢が原因で資金を回収できなくなるリスクのことを指します。
例えば、災害や戦争、経済制裁の影響で企業が撤退し、投資資金を回収できなくなるケースなどが挙げられます。直近では、ロシアのウクライナ侵攻時に、多くの西欧企業がロシアから撤退しましたが、出資した資金をすべて回収できなかった例があります。
「流動性」とは「現金化のしやすさ」を意味し、「流動性リスク」とは「簡単に現金化できないリスク」のことを指します。
例えば、上場株式は一般的に流動性が高い資産ですが、取引量の少ない中小型株式は流動性が低い場合があります。また、不動産は買い手を見つけにくいため、流動性が低い資産の代表例です。
例えば、現金が必要になったときに、買い手に足元を見られて安い値段で売らざるを得ないことがあります。また、金融危機など信用不安が広がると、売りたい人が増えて買い手が少なくなり、資産価格が急落することがあります。
流動性リスクが顕在化すると、売りたくても売れない状況が生まれ、結果的に市場の価格変動がさらに大きくなります。例えば、企業の信用が低下した場合、その企業の株を持つ投資家が一斉に売却に動いたり、不動産市場でも現金化を急ぐ動きが広がることがあります。こうした状況が重なると、市場全体でパニック的な売りが発生し、流動性リスクが一気に高まることになります。
その理解でいいと思います。金融にまつわるリスクは、平時においては「価格変動リスク」が中心です。しかし、市場環境が悪化すると、信用リスクや流動性リスクなどが一気に影響を及ぼし、資産価格が急激に変動することがあります。
そうですね。金融とは、本質的に不確実性を伴うものです。そこを理解できると、金融の仕組みがより見えてくるのではないでしょうか。