金融サービステック企業の株式会社モニクルは、総務省が主催する「テレワークトップランナー2024」に選定されました。「テレワークトップランナー2024」は、テレワークの導入・活用を進めており、加えて特色ある優れた取組を行っている企業・団体を総務省が選定・公表する取り組みです。
モニクルグループは、グループの原点となった株式会社Navigator Platform(2024年9月に株式会社モニクルリサーチに社名変更したモニクルの子会社)が設立された2013年から、フルリモートを前提とした働き方を選択しています。モニクルは、なぜフルリモートを選択し続けているのでしょうか。経営・採用観点から、木村敬子経営企画室長に話を聞きました。
モニクルがグループとして取り組んできたことを、このような形で評価いただいて、素直にうれしかったですね。
Googleで経験しましたね。10人くらいのチームマネジメントをしている時期に出社とリモートと選択しながらのいわゆる「ハイブリッド勤務」をしていました。
リモートの方が多いですが、「週に2日くらいは出社しようかな」というバランスで、自分でスケジュールを立てています。出社すると、やはり他の出社してるメンバーとのコミュニケーションが取りやすいですし、カジュアルな雑談などを通して情報収集したり仕事のアイデアに繋がる話が聞けたりすることも多いですね。
一方、リモートだと子どもの学校行事など、家の用事があるときに対応しやすいですし、子どもが家に帰ったときに様子が分かるのも安心ですね。他にも通勤時間を気にせず仕事に打ち込めるのが大きなメリットです。特に、分析作業などのデスクワークは家の方が集中しやすいので、出社とリモートのどちらも選択できることに、働きやすさを実感している日々です。執行役員かつ経営企画室長というポジションで、経営戦略と人材戦略にコミットし、刺激的な毎日を過ごせています。
私個人としては、先ほどお話した通り、家庭生活と仕事を両立しやすく、ワークライフバランスをとりやすい点が大きなメリットだと感じています。
また、経営と人材にコミットする立場から組織を俯瞰すると、地域を問わず多様な人材を確保できる点が大きな魅力ですね。モニクルグループとしては、フルリモート制度があることで、子育てや地域創生の観点で社会に新たなキャリアの選択肢を提供できていると感じています。
子どもとの時間を確保しやすい勤務環境なので、他社ではキャリアを諦めざるをえなかった子育て中の方を採用できています。また、居住地によって仕事の幅が狭まることもなく、キャリア形成が可能な体制を確立しているので、地元に住み続けたい方やワーケーションを希望する方もいます。多様な働き方を社会に提供しようという経営者の姿勢が一貫している点も、評価していただけているのかなと思っています。
フルリモート体制で課題になりやすいのは、やはりマネジメントやコミュニケーションだと思います。私自身もGoogleで初めてリモートでのマネジメントを経験した際に、コミュニケーション面で苦労しました。チャット機能を使っていましたが、Slackほどグループでの相互会話ができる環境ではなくて…。
でもモニクルは、フルリモートを前提とした体制の中で事業を拡大し、着実に成長を重ねてきています。歴史を紐解くと、10年以上の歴史があるわけです。
グループの原点となるナビゲータープラットフォーム(現在:モニクルリサーチ)の設立は、個人投資家と機関投資家と呼ばれるプロ投資家の「投資情報の格差」が大きいという課題意識に端を発するんです。事業をスタートさせた原田(モニクル代表取締役CEO)と泉田(モニクル取締役)による、「金融メディアの力でその格差を埋めよう」、「メディアならフルリモートで運営可能だ」という判断から始まっていて、それが2013年ですね。
事業を興すとなると、最初は固定費なども最小限に抑えたいじゃないですか。もちろん、そこは金融のプロの二人ですし、経営判断としての目線もありました。でも、そもそも原田も泉田も証券アナリストで、「二人とも自分の部屋で集中して株の分析をするのが何よりも好きだったから、フルリモートを選んだ」そうなんです。通勤は時間のロスにもなりますよね。
フルリモートは「仕事に全集中できる環境が理想」という二人の考え方に由来するのではないかと思います。泉田は社内でもよく、「ワークライフバランスというより、ライフあってこそのワークだ」と話していますね。
2018年に設立した株式会社OneMile Partners(現:モニクルフィナンシャル)は、はたらく世代のお金の診断・相談サービス「マネイロ」を運営していますが、2020年からのコロナ禍により、事業方針の方向性を検討せざるを得ない状況に陥りました。
そんな中、それまでに蓄積していたフルリモート勤務のノウハウを活用し、100%オンラインでもセミナーや金融サービスを運営できる体制を社内のエンジニアと協力し、わずか2カ月で整備することができました。結果的に、リアル店舗に限らず、全国のお客さまにサービスの提供が可能となり、継続して成長できる事業モデルを確立できたと思います。
それに合わせて、勤務する社員にも当初は金融業界では珍しく、ハイブリッド型の勤務を導入していました。現在は出社を原則とする方向性に切り替え、その時々の事業内容に適した出社形態を柔軟に取り入れています。モニクルグループは「フルリモート」のカルチャーが前提とはいえ、そこはもちろん事業との相性を踏まえての経営判断を行っています。
これまでも、定期的な1on1の実施、SlackやGatherなどツールの導入、社内のコミュニケーション活性化施策など、さまざまなアイデアを形にしてきました。普段からSlackでのやりとりが活発ですし、情報量が不足するというリモートワークでありがちな課題をコミュニケーションで補えている印象です。
また、チャットだけではなくて会話の必要があれば、すぐにオンラインで顔を見ながらのミーティングを実施することもあります。制度やツールについては、社内からの声をもとにその都度必要に応じて、対応してきました。現状、フルリモートの制度としては十分整っていると思いますし、これからも社内の必要性や社会の変化に合わせて、対応していきたいと考えています。
モニクルでは「RESPECT(敬意)」をValues(価値観)のひとつとして掲げていて、それがしっかりと体現できているので、心地よいコミュニケーションが実現できていると感じます。コミュニケーションミスがないように気にかけ、相互の配慮が行き届いているからこそ、円滑な関係が成立しているのだと思います。
まず、Values(価値観)や評価基準をきちんと言語化しました。これによって、会社が価値観として何を重要だと考えているかを浸透させ、マネジメントの属人的な部分を明確にし、部下と共通言語を使って目標設定や振り返りができるように仕組みを整えました。この仕組みのおかげで、一貫性のあるマネジメントが実現していると感じています。
会社として大切にしたい価値観は、すでに経営陣の中にあったものをワークショップなどを通して言語化していきました。そして、それを会社全体に浸透させるために色々な工夫が必要でした。その一つとして、Valuesに基づく行動規範を新たに定め、評価制度に組み込みました。すでに明確な評価制度はもちろんありましたが、それをValuesに紐づけてさらに細分化して確立しています。
フルリモートを前提にした状態で会社がグロースしていけるよう、人的資本を高めるための施策については現在も調整を進めているところです。これからも、メンバー一人ひとりが活躍できる環境を整えながら、フルリモート体制を活かして、継続的な成長を目指していきたいです。